「伝えたかったことはなにか」ゴールド 金塊の行方 maruさんの映画レビュー(感想・評価)
伝えたかったことはなにか
映画にした以上、俳優が体重を増やしてまで挑んだ以上、物語に「心をつかんだ何か」があったはず。
祖父が0から起こし、父から自分へ、代々続いた会社が無くなりそうな危機に瀕し、どうにかして続けなければという責任に押しつぶされそうなケニーが、ある日夢を見た。
その夢を信じたケニーは、妄信した(といっても過言ではない)ケニーは、夢に出てきた、昔会ったことのあるマイケルに金鉱を掘り当てるよう依頼する。
オチでは、実は、金は掘り当てられておらず、マラリアでケニーが生死の境をさまよう中でマイケルは、金がないと結論づけていた。それでも、自分(マイケル)を信じてくれたケニーに報いたいと、ゴールドの含有量をごまかし、「ゴールドを掘り当てたことにした」。
「馬鹿にしたやつら見返してやろうぜ」
みたいな言葉を、ケニーからかけられたマイケルは、憶えていた。ゴールドはない。金もない。ではどうするか。『敵をだますにはまず味方から』で、マイケルはケニーの性格を熟知し、そのままゴールドはあると信じ込ませ、いけるとこまでいかせようと画策。…なんやかんやあって、結局、マイケルの詐欺であったことが判明し、FBIが会社も捜査され、すべてを失うケニー。傷心の中、元恋人の家へ転がり込み…マイケルからの8200万ドルの小切手を受け取る。
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夢を妄信した男を、誰もが信じた。妄信とは「100%自分を信じている」ということ。人は誰しも、そういう人間の言葉は、信じてしまう。人は「絶対=100%」にあこがれる。
結局、ゴ-ルドは無かった。夢だった。
はじまりは、会社が窮地に追い込まれ、転落人生を目の前にしたケニーが、ふと見た夢。それに、藁をもすがる思いで、ある程度の知識しか無く「掘る」という宝探しに没頭した男の末路は、詐欺で得た金だった。だまし切って痛快な感じのオチになってるが、そのお金は、誰かの働いたお金の集まりだ。
「眠ってみる夢」に根拠はない。
『藁をもすがる思い』だったのは、自分の説を否定され路頭に迷っていたマイケルも同じだったのかもしれない。似た境遇の二人、類は友を呼ぶ、必然の出会いだった。力及ばずの二人、その末路は、いわずもがな。
「見返す」という意味では成功だが、それ以外では尊敬できる部分はない。自分の見解や知識を見直すことなく、代々継がれた会社を慣行的に家族経営色濃く継いでいくだけでは、生き残れなかった。一つ一つ努力して生きるか、一足飛びで高みに上るか。後者を選んだ二人は、どうなったか。