「相変わらずナメている人達」ジュラシック・ワールド 炎の王国 movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
相変わらずナメている人達
シリーズ全て見てきている。
恐竜をナメて存在を利用しようとする派vs純粋に恐竜が好き派が一貫して出てくるが、一貫して問いかけられている遺伝子操作の浅はかさが今作でもテーマになり、クレアやオーウェン自体の考え方にも変化を与えていく。
前作で、恐竜を飼い慣らしてエンターテインメントに活用していたが恐竜達が暴走し、多大な犠牲者を出した。
あんなに命からがらの目にも遭ったのに、懲りずに恐竜ラブなクレア。火山噴火警戒区域の島にいる恐竜達の絶滅を人の手で防ごうとしている。
一方、ラプトルを手懐けていたオーウェンは、自然の流れに任せる考え。
ところが、ある島に恐竜を全て輸送し保護しようと言い出した富豪に信頼された起業家ミルズにより、オーウェンもラプトルのブルーを生き残らせようと、みんなで火山噴火の島へ。
まずこの段階で、みんな軽装すぎ。谷間ばっちりのタンクトップで乗り込む場所ではないし、溶岩なんて近づくだけで凄まじい熱風や火砕流の可能性もあるのに、無防備すぎる一同。
ところが、恐竜を輸送するだけでなく、利用しようとする一味の存在に気付き、ミルズに騙されたと知るクレアとオーウェンとクレアの同僚達。
この同僚達がまた、恐竜大好きなのは良いが危険性への覚悟がちょっと甘い獣医女性と、WEB屋さんでアウトドア音痴な青年。彼らも活躍するんだけど、webに強いのとエレキに強いのは違うのに、電気配線まで任され始める青年。
前作で使っていたガラス球状の乗り物がうまいこと見つかって乗り込むも、海にぼちゃんし、溺れそうになりながらも、麻酔から覚めたばかりのオーウェンが救出に大活躍。いやいや普通その状況じゃオーウェン走るのも泳ぐのも無理でしょう、とんでもないオバケ体力。
火山島からの脱出には成功し、恐竜を積んだ船で、恐竜保存に使う島への移動に紛れ込む一同。
強い麻酔銃と銃弾で瀕死のブルーのオペをする獣医。急遽輸血まで必要となり、なんと近くの檻にいたt-rexの血を取ってくるオーウェンとクレア。危険すぎだし、そもそも勝手に違う種の血を混ぜて良いの?!違法ではないことになってるけど、めちゃくちゃすぎ。
島につくと、競りにかけられる恐竜達と、ついた値ににまけるミゲル。そして、イベントの隠し目玉として、富豪のお屋敷内で勝手にDNAを掛け合わせて作り出した、とんでもなく残忍なインドミナス。寝たフリをして人を食べたり、銃や麻酔すらもろともしないとにかく強いやつ。レーザーに当てた対象を獲物として追い回す機能まで持つ。
こんなのをお金になるからと兵器として作り出す人の気がしれない。でもこれって、農作物や畜産物の過度な品種改良と大して変わらない。遺伝子操作の暴走を利便性やお金のために加速させる危険性が再び問いかけられるが、物の見方がお金に偏ったアホミゲル。作り出した中国人ですら危険と言っているのに、なんと競りにかける。でもそのインドミナスまで檻から放たれ、カオスと化すお屋敷。
ミゲルにお屋敷主人の富豪も殺され、もはやなんの制御もない環境でサバイバーな一同と、富豪の孫の少女。その富豪はかつて恐竜に入れ込み親友ハモンドとジュラシックパークを作ったまさにその人だが、失った娘のクローンを孫として作り出した事でハモンドと決別したという設定。
その孫の少女が、クローンながら、本人には気持ち悪さなどはない、感受性と知恵のあるごく普通の賢い少女で。恐竜は大好きだが、両親おらず祖父とナニーとの暮らしに寂しさを抱えながら、ミゲルの裏の顔にいち早く気付いており、オーウェンとクロエに父性母性を見出す。
結果、オーウェンとブルーの師弟関係がまだ生きており、その絆のおかげで、追い詰めてくるインドミナスにブルーが立ち向かってくれて、助かる一同。インドミナスは古い恐竜の骨の標本にぶっ刺さって死亡。
どんなにお金があり様々を利用する悪い奴らも、残忍な恐竜も、結局は物理的に死ぬのが皮肉というかこの作品の面白さ。ミゲルも最後は恐竜の餌食。恐竜達のDNAを密かに持ち去ろうと技術の詰まった保存容器に引っこ抜いた恐竜の牙などを入れていた悪いやつらも、食べられたり踏まれたり。
なんとか助かった一同。なんとここでオーウェンが、ブルーに、一緒に来ないかと声をかける。いやいやどこへ、危険すぎ!でも、レックスの血が入ったブルーは、別れを選び島の奥に去っていく。
猛獣はあくまで凶暴で共存不可。
そこに手を施す人間への問いかけを今作でも描いていた。
クローンや遺伝子操作で産まれた個体にも感情や頭脳や個性はあり一度作り出してしまえばその尊厳は軽視すべきものではない、存在は作り出した人の掌の上だけでは転がせなくなる。それでも大丈夫ならば産み出せば良いが、そんな保証はどこにもないのに、私欲のために自然に任せず命を生み出す危険性と、驕り高ぶり浅はかさ。
前作では最後にオーウェン自ら、行けとブルーを山に返し少し寂しそうなブルーだったが、今作はオーウェンが一緒にいようと言っても、自立し自然を選ぶブルー。
そして、クローンで産み出された少女の活躍とオーウェン達との協力体制。
その場面にも今作の、今までとは時代も変わり、ただ警鐘を鳴らすのではなく、実際に遺伝子操作や人工的妊娠が当然でそうして産まれた子供たちも沢山いる世界において、その風潮とどう向き合うかを問いかける視点が描かれていた。