「暴走する恐竜、迷走するシリーズ」ジュラシック・ワールド 炎の王国 ao-kさんの映画レビュー(感想・評価)
暴走する恐竜、迷走するシリーズ
恐竜とヒトが初めて出会う驚きと感動を描いた時点で『ジュラシック・パーク』の役目は終わったのかもしれない。
甦った恐竜たちに観客もキャストも驚かなくなった後、4本の続編はアドベンチャー映画やモンスターパニック映画に舵を切ろうとするも、結果は二番煎じはおろか、出涸らしとさえ思える出来映えのものもしばしば。そして、本作も過去の続編と同じ轍を踏み、果てにはその轍さえ踏み外した感が否めない。
『ジュラシック・パーク』の面白さとは自然をコントロールできるという人間の奢りと安全神話の崩壊にあったと私は思う。火山噴火という自然災害を前に恐竜を作った人間たちがどのように向き合うのか?救うのか?それとも見殺しにするか?これが物語の主軸として機能し、ノアの方舟のような展開になるのであれば、一興だったであろう。しかし、火山の噴火から恐竜を救い出すべきか否かの葛藤はほとんど感じられず、噴火から逃げ出すスペクタクルはご都合主義の展開続きで興ざめするばかり。ハイブリッド恐竜が暴れる後半はリアリティーの欠片もない展開。そもそも架空の恐竜の登場を求めてる観客がどの程度いるのか甚だ疑問である。
生命の重さや力強さを感じとれず、人間の奢りだけが暴走する本作にシリーズの迷走を感じざるをえない。