「ジョーズのようなシリーズになる不安」ジュラシック・ワールド 炎の王国 アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
ジョーズのようなシリーズになる不安
3D 吹き替え版を鑑賞。25 年前に衝撃的に公開されたジュラシック・パークの第1作は,マイケル・クライトンの原作小説に極めて忠実に作られた傑作で,CG の恐竜を世の中に解き放った。CG の恐竜は製作が今とは比べ物にならないほど手間がかかったため,恐竜の種類もあまり多くなく,アニマトロニクス(機械仕掛け)の恐竜も併用されていた。例えば,病気で動けないトリケラトプスや,調理場に子供達を追いかけてくるヴェロキラプトル2頭のうち,1頭はやはりアニマトロニクスであった。
2年後にロスト・ワールド/ジュラシックパークが作られ,恐竜は南太平洋の孤島からアメリカのサンディエゴに上陸した。さらにその4年後にジュラシック・パーク III が作られたが,話の新規性に限界を感じさせる出来で,その後 14 年間このシリーズは沈黙してしまった。
3年前に公開されたジュラシックワールドは,「パーク(公園)」から「ワールド(世界)」とタイトルは大きくなり,CG の恐竜も第1作の数倍に増えたものの,話のネタに困っている状況に変化はなく,遺伝子操作で新種の恐竜を作り出すという話を盛り込んで新規性を出そうとしたのだが,必ずしも起爆剤になったとは言い難く,個人的に最も印象的だった恐竜は,巨大な海竜のモササウルスであった。また,ヴェロキラプトルを訓練できるという設定が追加されていたが,あまり丁寧には描かれていなかった。
本作では,パークのあった島の火山が噴火したため,恐竜を別な島に救い出すというミッションが最初に示され,非常にワクワクするような話だったのだが,実はそのほかに重要な展開があり,前半の話をあまり大事にしていないのが残念だった。遺伝子操作の新型恐竜は今作にも出てきており,前作と同じC人の科学者であったのは,このシリーズにもCの資金が相当流れ込んで来ているのが察せられるようだった。
恐竜を島から脱出させるだけではなく,第2作のロストワールドのような展開になったのには,全く想定も期待もしていなかったので驚いたが,恐竜の大きさを実感させるために身近な風景の中に置くという趣向は,すでに二番煎じの感を免れないし,肝心な恐竜が主役で無くなってしまうのである。悪い奴が沢山出て来て,それぞれ凄惨な最後を迎えるというのもアメリカ映画の特徴であるので物珍しさはない。やはり,このシリーズも,「ジョーズ」と同じようにマンネリ化してしまうのかと思うと非常に残念な気持ちになる。今作に出てくる少女の正体についても,特に驚きはしない話だったし,誰かの思いつきなのだろうが,特に必要はなかったような気がした。どんな理由があろうとあの行動は許されないだろうと思った。
役者は,前作のオーウェンとクレアがそのまま出ていたのは継続性が感じられて良かったと思う。恐竜を作り出すテクノロジーは残っているので,さらに続編も作る積りなのだろうが,次こそはあまり人間側に引っ張った話でないものを期待したい。音楽は,猿の惑星シリーズやローグ・ワンなどを手掛けたマイケル・ジアッキーノで,やはりジョン・ウィリアムスのテーマによる変奏曲を作る仕事も一部あったが,ほとんどはオリジル曲で,しかもそれぞれが各シーンに見事に合っていたので,非常に頼もしいものを感じた。
監督はスペイン出身の若手で,なんと本作が長編映画の3作目だというので,非常に思い切った登用だと思ったが,STAR WARS Ep.VIII のようなとんでもないシーンを押し付けるようなことはなかったと思う。オーウェンがブルーを育てている様子など,前作で見せるべきだったシーンを丁寧に拾っていくという手法も手堅く,好感が持てる。また,火山から救い切れなかった恐竜の哀れを誘う姿は,深く印象に残るものであった。ただ,フェリーが搬入口のドアを締めもせずに出航することはあり得ないなど,奇妙で余計なシーンが結構目についた。ジュラシックワールドの3作目のオファーが既に出ているとも言われており,それでいいのかとかなり気になった。
(映像5+脚本3+役者3+音楽4+演出4)×4= 76 点。