「主役がトムのための素材。オレオレ映画のワンパターン」バリー・シール アメリカをはめた男 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
主役がトムのための素材。オレオレ映画のワンパターン
"オレオレ(俺ってスゴい、カッコいい)"志向のトム・クルーズほど適役はない。実在した人物"バリー・シール"の伝記である。
いい意味で、とにかくトムのオレオレ盛りが、バリーと多分にシンクロしている。そもそもトムはカーアクションより飛行機、高い場所やハイスピード設定が大好きだ。もしトム以外の俳優だったら、こんなにネアカな作品にならなかったかもしれない。
70年代末、バリーは旅客機パイロットとしての優れた腕前から、CIAエージェントに引き抜かれる。任務は偵察機による中南米の空撮だったが、その立場を利用して、コカインの密輸や武器の横流しにまで手を染めていく。
CIAは、代わりの人材がいないために、コカイン密輸を黙認してミッションを続行させる。しかしやがてFBIや警察、DEA(アメリカ麻薬取締局:Drug Enforcement Administration)までマークされながらも、巨万の富を築き上げていくという大胆な半生を描いている。
原題の"American Made"="アメリカ製"は、まさに政府機関によって創り上げられた人物だったことを意味する。展開はコメディ調で、テンポがいい。主人公のバリーが自身の経歴をビデオカメラに独白しながら、振り返っていくカタチを取る。
時代背景的に、公衆電話やポケベルを駆使していたシーンが面白い。ドキュメンタリー的に見せるため、わざとスタンダード(4対3)画角で収録したり、当時の時事ニュースを挿入したりする。
映画本編も、古いビデオテープのプレイバックを装っているのか、映像ノイズが多い。意図したものとはいえ、全体的にあまり画質のよくない映画である。
実在人物だったことが唯一の驚きで、それ以上それ以下でもない。とんでもなくドラマティックということもなく、ストーリー的に残るものがあるわけでない。
例によって、トムの字幕翻訳は戸田奈津子の指定席。意訳・誤訳の女王なので、英語のセリフをいつも以上に注意して観たい。ついでに「映画.com」の原題表記"Barry Seal"はマチガイ(誤植)。ホントは"American Made"である。
(2017/10/21/TOHOシネマズ日本橋/ビスタ/字幕:戸田奈津子)