「転生を繰り返し辿り着く答えが秀逸。犬は人のために産まれるのではない。」僕のワンダフル・ライフ movie mammaさんの映画レビュー(感想・評価)
転生を繰り返し辿り着く答えが秀逸。犬は人のために産まれるのではない。
犬の一生より人間の一生の方が長いから、犬が3回転生しても、近い場所に産まれ直せれば、同じ飼い主のもとに帰れる事もある。ということのよう。
転生を作中の設定として捉える人もいると思うが、人間でも輪廻転生を繰り返すというし、違和感なく鑑賞。
作中でも、元来健気で飼い主のためにベストを尽くす「犬」は常に頑張っているのだが、作品の伝えたい事は、犬が人を幸せにしてくれる、とか飼ったら責任を持て、など、人間目線の一方的な見方でないところが良かった。
犬自身が、僕は何のために産まれてくるんだろう?と考えながら生きている。
最初に産まれた時は、瀕死のところをひとりっこの少年イーサンが母親と見つけてくれ、ゴールデンレトリバーのベイリーとして、イーサンの相棒になり仲良く大きくなる。イーサンはベイリーとラグビーボールで遊んでいたのも影響してか、アメフトで州立大学がスカウトに来て奨学金の話を貰えるまで活躍する選手に成長した。
家族間では、優秀な営業マンのイーサンの父親が希望通りに出世できなかったりするうちにアルコール依存がひどくなり、常にイライラしていて母親に暴力を振るいそうになるなど家庭から目を背けたくなる部分もあったが、彼女とベイリーと明るく過ごしアメフトにも打ち込めていた。
ところが、嫉妬に狂った同級生が花火をイーサンの家に投げ入れ、足を負傷したイーサンは、奨学金の話も消えて、未来が絶たれ農業大学へ。行き場のない絶望から、大好きな彼女ハンナも遠ざけてしまった。
同じ頃老いてきたベイリーは農業大に行くイーサンとも離れ離れになり、寂しさゆえ一気に老いてしまい、転生。
次の犬生ではシェパードの警察犬エリーとなり、妻を亡くした孤独な警察官と職務で大活躍。ところが撃たれて転生。
次はコーギーのリノとして黒人の真面目な大学生のところへ。彼女が男性と出会うきっかけにもなり、家族となり2児に恵まれる人生を見守りながら、男性が連れてきた雌犬に強く惹かれて過ごす。
次はバーナードとシェパードの雑種として産まれ変わり、無鉄砲な飼い主に拾われ、ワッフリーとなるが、ろくにお世話もして貰えずずっと外で鎖に繋がれたまま。最終的に捨てられ、彷徨った先でかつてのハンナを見つける。見た目は変わってしまっても、ハンナの匂いはちゃんと覚えていて、昔過ごしたイーサンの家にも戻ってみる。イーサンは随分歳を取りずっと1人を貫いていて、戻ってきたのに保健所に最初は連れて行かれたが、バディと名付けて家に連れ戻してくれた。
ハンナをイーサンに会わせなければ!その一心で奔走するバディ。ベイリーが3回転生する間に、ハンナは夫が亡くなり苦労しながらも娘を育て、2人の孫に恵まれようとしていた。
みんな数十年の間に環境が様々変わりながらも生きていた中、ずっと1人だったイーサン。
父親の事も、将来が狂ってしまった事も、重い影を落としていたのだろう、それ以来楽しむ気持ちをまるで忘れてしまっていたように見える。
でも、バディはベイリーとしてイーサンと遊んでいた頃の芸を見せたり、僕はベイリーだよ!と必死にイーサンに訴えかけ最後には、お前はベイリーなのか!と気付いてもらえる。
何のために産まれるんだろう?という疑問を抱いていたベイリーは、
・楽しむ
・可能な限り困っている人を見つけて救う
・好きな人をなめる
・怒ってしまったことを悔いたりくよくよして振り返ったりしない、ただそこにいればよい
・今を一緒に生きる
そのために僕はいるんだ、と気付く。
とはいえ、人間にとって、犬はそこにいるだけなどでは全くなく、常に飼い主の気持ちを慮り、犬なりのベストな方法で尽くしてくれて、犬が引き寄せてくれる出会いも沢山ある、とても大きな存在だと思う。
だからこそ、犬自身は決して人に尽くすために産まれてきたつもりはなく、そこにいるだけでよい、そういう存在として人間も犬を大切にして欲しいと強く感じる作品。警察犬のエリー、活躍してたけど、楽しくはなかったとはっきり明言していたなぁ。
ベイリーはさまざまな飼い主と出会い、どこでも愛されていたが、最後に戻ってきたのは一緒に沢山遊んだ犬自身が楽しいと感じた思い出が詰まっていて、飼い主以外との関わりもあった、輪があった場所。犬は群れで暮らす事が好きなんだもんね、と納得するともに、人もそうだなと気付く。
みんなが戻りたくなる楽しい場所でいよう、そのためには私自身が周りの人と楽しんで生きるだけ、と思わせてくれる作品。