「これは、”映画1本まるまる予告編”。付き合うかどうかはオトナの判断」ザ・マミー 呪われた砂漠の王女 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
これは、”映画1本まるまる予告編”。付き合うかどうかはオトナの判断
誤解のないように先に言っておくと、そんなにキライな作品ではない。むしろ堅調な洋画ファンが好きそうな、ベタなハリウッド大作だ。
そのうえで苦言を呈すると、これは"映画1本まるまる予告編"なのである(後述する)。
ユニバーサルスタジオが、自社のクラシック映画である、"モンスタームービー"を改めて作り直していこうという、"Dark Universe Project"の第一作になる。1920~50年代に黄金期を迎えた、"ユニバーサル・モンスターズ"のリブートになっている。シリーズの"復活"にちなんで、手始めに「ミイラ再生」(1932)を選んだとしたら洒落ている。
"ユニバーサル・モンスターズ"はおそらく100本近くのタイトルがあり、「ノートルダムのせむし男」(1923)からはじまって、「魔人ドラキュラ」(1931)、「フランケンシュタイン」(1931)、「透明人間」(1933)、ミュージカルじゃないほうの「オペラ座の怪人」(1925)もそうだ。これらは映画コレクターズアイテムとしても有名。とくに劇場ポスターの人気は高く、作品によっては法外な値段がついている。
同社としては、ディズニーの"アベンジャーズシリーズ"、ワーナーの"ジャスティスリーグシリーズ"に倣った安定収益源と、USJなどのリゾート&パーク事業のキャラクター開発にすぎない。それに乗っかるかどうかは、オトナの判断だろう。
そして"トム・クルーズ主演"ということに、ヘビーな映画ファンなら苦笑してしまうかも。トムは、歳のわりに若ぶった役を選び、自分がいちばんのナルシスト主演を好むうえギャラが高いので、近年はほとんど自作プロデュース作品にしか出てない。自分で自分を指名するのだ。だから久しぶりに"俳優"として受注した作品ともいえる。
ユニバーサルとしては、先の"アベンジャーズ"と"ジャスティス"、そして20世紀フォックスの"X-menシリーズ"もあって、もう目ぼしいメジャー俳優は残っていない。自尊心の高いトム様が参加したくないはずはない。かくしてユニバーサルとトムはお見合い成立となる。
ちなみにハビエル・バルデムとデップ様が、「フランケンシュタイン」と「透明人間」に出演するとウワサされている。
さて作品だが、「ミイラ再生」は、ハムナプトラ 失われた砂漠の都」(1999)でリメイクされたが、話のスジはまったく異なる。こういうシリーズものにありがちのエンドロール後のサービス映像がない。それはこの作品自体が"続編への伏線"である証拠のひとつ。予告する必要がないからだ。
すでにラッセル・クロウ演じるヘンリー・ジキル博士(「ジキルとハイド」)が出てきて、研究機関"プロディジウム"が、世界中の"モンスターズ"を回収しようと企んでいる。また、ボスキャラであるはずの王女アマネットが弱すぎる。能力を持ちながら、人間に捕まってしまう雑魚(ザコ)なのでホラーとしてもまったく怖くないし、自己犠牲のラブストーリーも、"甦生"があまりにも容易で有難味がない。
"Dark Universe Project"の序章として機能する本作は、展開のすべてが中途半端になってしまう。仕方ないのかもしれない。
初回は4DXで観たが、軍用輸送機の墜落シーンの4D演出は素晴らしい! 3Dバージョンは自動的にIMAXになってしまうので、ファーストデー(割引日)向きである。
字幕版は、ひさびさの戸田奈津子先生なので意訳に注意。これはトム様指定のアテンダントなのか。もう80代なので仕事は選ばれているようで、今年は200本くらい映画を観ているが、2本目である(もうひとつは「ボンジュール、アン」)。
(2017/7/28 /ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/字幕:戸田奈津子)