パーソナル・ショッパーのレビュー・感想・評価
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霊に頬を撫でられたかのような、ジャンル分け不能の異色映画
アサイヤス監督の描く作品はどれも飛び抜けた個性を持ったものばかりだ。今回はジャンルさえも飛び越え、心霊、セレブ、サスペンス、ヒューマンドラマといった要素を行きつ戻りつしながら、艶めかしい風が観る者の頬を撫でながら横切るのを感じる。依頼者に代わって霊との交信を行うヒロインは、セレブの世界を傍目に見ながら「代理の買い物」を行う者でもある。また彼女は、「あの世」があるのか知りたいと願う一方、セレブが身につけるドレスを身にまとってみたいという変身願望さえも募らせる。代理としての存在。異世界への興味。変身願望。そして、この映画もまた境界線の淵でゆっくりと変わり身を遂げていく。「なぜ?」「どうなった?」。これらの言葉は無意味。わからないことが多すぎる。狐につままれたような・・・とはよく言ったものだが、本作もまさに透明感あふれるこの世界で煙に巻かれる醍醐味をじっくりと味わいたい一本だ。
あなたは誰?ではなく、私は誰?
死んだ兄の亡霊に脅え、携帯に届く脅迫メールに操られ、まるで別人に豹変したかのような行為に耽るヒロインの職業は、パーソナル・ショッパー。多忙なセレブに代わって買い物を請け負う彼女は、本来なら手の届かない高価な服にこっそり手を通すこともある。つまり、自分というものがない。執拗に追いかけてくるメールの送信者に対して、「あなたは誰?」と問い続けるのだが、本質は「あなたは誰?」ではなく「私は誰?」なのだ。それは、「アクトレス」でその個性に魅了された監督のアサイアスが、クリステン・スチュワート自身に投げかけた問いであり、本人にとっても正直な自問自答ではなかったか?と、そんな風に想像できる興味深い1作である。
主人公の裸を撮りたいだけ?
本作、雰囲気は良いのですが、何を描きたいのかが定まっていない印象の作品でした。
霊媒師としての主人公に焦点を当てたいのか、それともパーソナルショッパーとしての日常を描きたいのかが曖昧で、全体としてテーマがぼやけてしまっています。結果として、作品から何を感じ取ればいいのか分かりにくいまま終わってしまいました。
また、内容が薄いわりに不要と思えるシーンが多く、特に主人公の着替えや心臓のエコー検査の場面は、物語に必要とは思われず、正直なところ、監督はクリスティン・スチュワートの裸が撮りたかっただけではと思ってしまいました。
マレーネ・ディートリッヒの歌
面白いよ~!と映画友達に教えてもらって急いで見に行った。面白かった!幽霊、霊媒師、差出人不明のメッセージ、双子の兄妹の兄ルイスが死んだ、この双子兄妹はどちらかが最初に死んだらサインを送るという約束をしていた。これとセレブの為の買い物担当=パーソナル・ショッパーはどのように結びつくのか⁉️
双子の妹の方のマウリーンはパリで、著名人で忙しいセレブ女性のキーラの為にハイブランドのゴージャスなドレス、靴、ジュエリー、バッグ、ランジェリーなどをパリやロンドンで買い、合い鍵渡されているキーラの豪邸に届けるバイトをしている。キーラのサイズや好みはマウリーンはもちろん、店員も熟知している。購入せず借りるだけの場合もある。ブランドはCHANELやCartierやPRADAなど。彼女は雇い主とは打って変わって地味でシンプルなスタイルで、例えば黄色のTシャツの上に薄茶色の地で幾何学模様が胸のあたりにあるセーターを着て、ジーンズにスニーカー、市内移動はバイクだ。
兄ルイスの妻だったララはマウリーンを気遣っている。でもルイス亡き今、共に暮らしていた邸宅は売るつもりだ。マウリーンも承知している。そんな中、観客はマレーネ・ディートリッヒの歌「鉋の歌」(Das Hobellied)を突然聞く。ララはアーティストなのか木材を鉋で削るシーンが何度か映る。それとディートリッヒの歌は関係あると思う。マウリーンはスマホに届く不気味なテクスト・メッセージに振り回され、ルイスからのサインに待ちくたびれ、キーラからは購入したドレスの試着を厳しく禁じられている。仕事でオマーンに居る恋人から何度も来るように誘われてもバイトやルイスを理由に行かない。
マウリーンは自分を生きていない。自分で自分を縛っている。自分自身を鉋で削る日々を送っている。やっと恋人のもとに行き山で二人ゆっくり過ごすことにする。そこでマウリーンはルイスからのサインを初めて明確に受け取る:全部、君の思い過ごしなんだよ、自分の為に自由に生きるんだよ、だから君が握りしめている鉋は手から離さなくちゃね。
演出とキャスティング、衣装、音楽がとてもよい映画だった。
霊界への禁止、欲望への禁止
2016年。オリビエ・アサイヤス監督。有名セレブの専属衣装係としてパリで働いている女性は霊感があるがはっきりと交信できるわけでもない。霊媒師でもある双子の兄の急死によって、退屈な仕事をしながらも霊界の兄からの交信を待ち続けるがこれといった兆しをつかめない。ところが、スマホへの匿名の着信によって雇い主であるセレブの衣装を勝手に着て出歩くようになり、、、という話。
霊媒の素質があり、霊と遭遇することもありながらも霊界につながることを拒絶されているように感じている主人公は、仕事では、セレブのために購入する美しい衣装や宝石類に魅せられながらも、試着することを禁じられている。つまり、二重の意味で「禁止」に取り囲まれている。匿名の着信は当初は霊界の兄からのメッセージかと思わせるが、次第に禁止されることで煽り立てられる主人公の欲望をそそのかすようになり、にわかに生々しい現実社会の心理的な策略がみえてくる。ふたを開ければ、セレブの浮気相手の策略によって、恐ろしい計画が進行中だったわけだが。
禁止されるから誘惑され、霊界にも自らの欲望にも翻弄されるのが、最終的にはやはり禁止されて放置されてしまう救いのない物語。翻弄の過程にあるどきどきこそが人生だってこと?
私には意味がよくわからなかった…。
あのよー、警察にはすぐ通報しなさいよ
あの世との交信。双子の兄ルイスを亡くした喪失感もあるモウリーンはあの世からのメッセージを待ち続けた。二人とも霊媒師だったというのだが、彼女はけっこうビビリ。古い屋敷でのラップ音が聞こえると、ルイスじゃないかしら・・・などと勝手に思ったりするが、怖い霊だったりすると一目散に逃げるのです。
セレブと一般人との格差や隔たりなんてのも感じながら、ルールさえ守れば出入り自由なところは何だか不思議な気分にさせてくれる。ブランド品など、結構自分の趣味で選んでいたようだし、スタイリストとしても自立できるんじゃないか!などと、珍しい職業に見入ってしまいました。
兄の霊を求めつつ、自分のアイデンティティをも見失い、謎の人物からのメールや殺人事件に遭遇してしまう不運。それにしてもメールの送り主は誰なんだよ?エンディングにしても何か虚無感漂うものだったし、霊媒師はもうやめろってことなのかな・・・POVホラーの逆をいく形で、主人公モウリーンの行く末を案じてしまいました。全く面白くないと思ったのですが、クリステン・スチュワートのヌードや密かな秘め事が良かったので加点。
もう一点、恋人と思われるギャリーはスカイプ画面でしか登場しないこと。置手紙もそれまでの筆跡が似てそうだし、かなり怪しい人物だった。もしや、メールもホテルへの誘導も彼の仕業だったのかな?
いつまでも印象が残る
人間の外見と内面、物質と精神|霊、セレブと庶民、会話とメール、日常と非日常、自然と人工|機械、都会と田舎、、、
その境界は、ファジーなものと考えて生きたい。そういったことを思った。
この豊かで、便利な現代とは、何だろう?思考する素材に溢れていた。
そして振り返って、現実の世界で生きることを考えた。
今もずっと、この作品の奥深いメッセージは強く残ったまま。テーマは、とても重い。
是非、アサイヤス監督の2016年カンヌ国際映画祭の公式記者会見をチェックして下さい。
(パンフレットの27ページ、「オリヴィエ・アサイヤス監督インタビューⅡ」)
ちょうど、先月公開の福間健二監督の秀作「パラダイス・ロスト」を見ながら、すぐに、この作品の記憶が蘇りました。
「コロナ時代」、両作品とも、是非皆さまにおすすめします!
クリステン・オナル
双子の兄であるルイスの急死に落ち込むモウリーン。彼女のお仕事は、忙しいセレブに代わって服やアクセサリーのお買い物をしてあげること。霊媒士? でもあるモウリーンは、 兄が住んでいた家でルイスの霊と交信しようとするのだが、iphoneに送信元不明のSMSメッセージが届くようになって…
前作『アクトレス』でもタッグを組んだクリステン・スチュアートをはじめから想定して脚本をしたためたというアサイヤス。見知らぬ客のためにブランド品を買い漁るパーソナル・ショッパーという若者憧れのお仕事を、精霊に導かれて筆をとったと伝えられる抽象画家(ヒルマ・アフ・クリント)や霊媒士(ヴィクトル・ユーゴー)という、目には見えない物を取り扱うスピリチュアルなお仕事と並列にならべて見せた点に本作シナリオの特徴がある。
金と欲望で真っ黒けっけの現実世界を、モウリーンのように人となるべく交わらないようにして遠ざけたくなる若者の気持ちもわからないではない。まして目には見えないコロナが世界中に蔓延する現況では尚更だろう。しかし、雇い主の衣服を身につけることによって変身願望を満たしたモウリーンは、その孤独につけこむように送信されてくる相手が誰かもわからないメッセージに唆され、しまいには雇い主の殺人事件にまきこまれてしまうのだ。
自分に濡れ衣を着せるため真犯人が仕組んだ悪事も公となり、唯一の相談相手であるルイスの恋人だったララから新しい恋人を見つけ人生前に進むことを聞かされたモウリーンは、今までスカイプでしか交信することのなかった恋人が待つ異国の地へと旅立つ決心を固めるのである。「全部私の気のせい」ルイスの死を言い訳に生身の人間との接触を避けてきたモウリーンは、(未来の精霊に導かれ)ついにリアル・ワールドへと一歩足を踏み出すのであった。
精霊たちに導かれ主人公が生き方を変える、いわゆるクリスマス・キャロル系の映画作品かもね。
媒体ですぎないこと
パーソナルショッパーというか霊媒師?
心霊ものだったのかしら
早稲田松竹で「メッセージ」との併映で、なかば時間潰しのために観た。
ほんのりとネタバレします。
双子の兄を亡くしたモウリーンはセレブの買物代行をしながら兄の霊を恐れつつもコンタクトしようとしている。
強い霊体験のあと、何者かが頻繁にメッセージを送ってくるようになり、次第に追い詰められていき…というストーリー。
前情報いっさいなし、なんならタイトルもあやしい状態で観たので、主人公の女優がボーイッシュかわいいな、くらいだった。
途中からあれ? これ「パーフェクトブルー」もしくは「ブラック・スワン」系の話? となったらどうもそうだったらしい。
主演女優はシャネルのモデルさんだったのね。衣装なんかが妙にゴージャスなのはそのせいか、と後から納得。
本来なら劇中に出てくるセレブこそが主演の「プロパーな自己像」であり、わからないで観たけど、きっとそういうメタ視点も込みなんだろうな。
まあ「神々の遊び」を眺めるような、贅沢な企画なんだな。
序盤は本当に情報を出し渋るので、ジャンルすらよくわからない。
いかに効率よく情報を伝えるかに腐心するハリウッド式の真逆。
そのぶん、映像に集中せざる得なくて、劇場で観るぶんには没入度はかえって上がり、妙に心には残る。
最終的には心霊ものだったのか…な?
並べた材料は全部使うし、こういうネタをこういう風に展開させるのか、と新鮮な感じを受けた。
ストーリーという山に登るのにあえて反対のルートを使ったとしても良いってことだね。
とりあえずクリステン
個人的佳作
スピリチュアル
予告編を見て、華やかな世界に憧れるパーソナルショッパーが、
禁じられていたボスの服を着てしまったことから、
予想もしなかった面倒に巻き込まれてしまう展開を予想していた。
ところが、冒頭から予想外のスピリチュアルな展開。
レンタルしたDVDを間違えたのかと思ったくらいだ。
その後、予告編から想定していた展開近くに戻ったが、
スピリチュアルなベースは変わらない。
そして、殺人事件が起こったものの、ほぼ予想通りの犯人。
終始ミステリアスな展開で、
ずっとどんでん返しを期待しているのだが、
結局、特段何も起こらないままフェイドアウト。
流れとしてはそれなりに楽しめた。
だが、肩透かしを食らったような物足りなさは否めない。
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