「クリステン・オナル」パーソナル・ショッパー かなり悪いオヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
クリステン・オナル
双子の兄であるルイスの急死に落ち込むモウリーン。彼女のお仕事は、忙しいセレブに代わって服やアクセサリーのお買い物をしてあげること。霊媒士? でもあるモウリーンは、 兄が住んでいた家でルイスの霊と交信しようとするのだが、iphoneに送信元不明のSMSメッセージが届くようになって…
前作『アクトレス』でもタッグを組んだクリステン・スチュアートをはじめから想定して脚本をしたためたというアサイヤス。見知らぬ客のためにブランド品を買い漁るパーソナル・ショッパーという若者憧れのお仕事を、精霊に導かれて筆をとったと伝えられる抽象画家(ヒルマ・アフ・クリント)や霊媒士(ヴィクトル・ユーゴー)という、目には見えない物を取り扱うスピリチュアルなお仕事と並列にならべて見せた点に本作シナリオの特徴がある。
金と欲望で真っ黒けっけの現実世界を、モウリーンのように人となるべく交わらないようにして遠ざけたくなる若者の気持ちもわからないではない。まして目には見えないコロナが世界中に蔓延する現況では尚更だろう。しかし、雇い主の衣服を身につけることによって変身願望を満たしたモウリーンは、その孤独につけこむように送信されてくる相手が誰かもわからないメッセージに唆され、しまいには雇い主の殺人事件にまきこまれてしまうのだ。
自分に濡れ衣を着せるため真犯人が仕組んだ悪事も公となり、唯一の相談相手であるルイスの恋人だったララから新しい恋人を見つけ人生前に進むことを聞かされたモウリーンは、今までスカイプでしか交信することのなかった恋人が待つ異国の地へと旅立つ決心を固めるのである。「全部私の気のせい」ルイスの死を言い訳に生身の人間との接触を避けてきたモウリーンは、(未来の精霊に導かれ)ついにリアル・ワールドへと一歩足を踏み出すのであった。
精霊たちに導かれ主人公が生き方を変える、いわゆるクリスマス・キャロル系の映画作品かもね。