「ラストシーンが心地よ過ぎる映画」T2 トレインスポッティング tricoさんの映画レビュー(感想・評価)
ラストシーンが心地よ過ぎる映画
ネタバレありで書きますが、ラストがとんでもなくいいです。
じんわり幸せと言うよりも、完全に脱力して、この世界にひたすら浸っていたいと思うラスト。
レントンと一緒に大音量で「Lust For Life」を流して踊りたいくらい。
アムステルダムに逃げて、それでも生活が上手く行かず行き詰ったレントンが願っていたのは、、
イギーポップを聴きながら仲間と酒を飲んで踊り、たまにドラッグをするような懐かしい日々。
だったんでしょうね。
それをやっと叶えて、心から落ち着き払った笑顔で踊るレントンに癒されました。
本当に良いラスト!
故郷ってやっぱり恋しいんですよね。
小さな頃から一緒に育った仲間も恋しいです。
過去を振り返れば必ずその風景や仲間も一緒に浮かび上がってくるわけですから。
改めてストーリーに関してですが、前作のトレインスポッティングを2日前に観直した状態で、出来るだけ予備知識を入れないように、期待しすぎないように。と注意して観ました。
結果、面白かったです。
予想はしていましたが、前作の若者らしい鬱屈したぶつけ場所のないモヤモヤから、40代の肉体の衰えや人生への悲哀も感じさせながら、こまめに笑いを取りつつ進める話。
メインはレントンとサイモン(旧シックボーイ)の掛け合いになりますが、二人の間に若いベロニカを挟むことで、適当過ぎるおっさん達のノリと勢いにいい突っ込みを入れていたように思います。
二人のポンコツぶりが無性にさまぁ~ずの三村に見えてしょうがなく、若い女子アナが突っ込みを入れて場を保つバラエティ番組のような雰囲気で観ていました。
大体の所、プロテスタントの集団に対して歌うシーンでの危機を適当な思い付きだけで切り抜けていく感じ。
おっさん達は動きは愚鈍だし、頭も回んないけれど、悪いことの場数は踏んでいるので逞しさだけは超一流。
レントンの適当に出まかせでつく嘘が堪らないです。
多分、プロテスタントからお金を奪う辺りまで、ベロニカから見た二人の印象って結構最悪だったと思います。
40代って、すぐ病気自慢するし、自分達しか知らない世代の話を大喜びでするし、若い世代の流行に痛々しさも自覚せずに乗っかろうとするし。
しかもあれだけ仲違いして裏で裏切ろうとしていたのに、ゲイかと思う程に仲良くなるし。
今まで一緒に居ながらも魅力を感じなかったサイモンに対しては、生き生きとした変貌ぶりに今までの自分への態度はなんだったんだ?という、ちょっと腹立たしいくらい。
と、そんな感じではなかったかと。
それにしても、サイモンは昔から見た目の割に使い物にならない口だけキャラでしたが、今回も途中から全く使い物にならなくなりましたね。
すぐ過去を持ち出して裏切ろうとするし、プレゼンでもろくにしゃべれないし、その他諸々、髪を染めている時のヨボヨボ感は結構痛々しいです。
それに対して、そんなサイモンと組んで話を前に進めていくレントンも適当なおっさんとはいえ、明らかにうまく回り始める展開にベロニカもレントンの凄さがちょっとずつ判っていったかと思います。
そして、人生を選べから始まるレントンの絶え間なく続く適当な言い回し。
この言い回しから女性が惹かれていく理由はいまいち判らないのですが、やっぱりレントンはサイモンと違ってバカじゃないんだ。と、同じように見えて明らかに能力の違うレントンの魅力が浮き立っていました。
こうなるとベロニカがレントンになびくのはしょうがないのかな?と思いながら、けれどここでまたサイモンから恋人を奪っちゃったらどうなるんだろう?と不安になりますが、初体験の相手からして同じ二人、この辺りの奪って隠しては宿命なんでしょうね。
スパッドも良い役回りでした。
口数の多すぎる二人と比べて、純粋で弱いくらいに心優しい昔の通りのキャラクター。
最終的にベロニカの持ち逃げを手伝うのはスパッドですが、スパッドがそれを容認したことが、ベロニカが持ち逃げしても二人は大丈夫と言う太鼓判みたいなものだったんでしょう。
彼の小説が奥さんだけではなく、いろんな同世代の人々の心を癒して欲しいと願います。
というか奥さんのラストの「タイトル考えたわ」って台詞はお洒落過ぎです。
二人の様子を一所懸命に気にしてないふりしてゲームしている息子の姿もいじらしくてたまらないです。
もし、10年か20年後に続編を撮ってくれるなら、スパッドには幸せになっていてもらいたいですね。
ベグビーは昔の通りのベグビーでしたね。
ちょろっと父親としての顔も見せますが、今回のラスボス的な扱いで、レントン達の仲間には加わらず。という事でしょう。
そんな感じで個人的には笑いながら楽しんで最後まで観切ってしまいましたが、でもやっぱり、この映画はラストシーンが本当に全てで、そして最高でした。
ベロニカに子供がいるのも驚きましたが、冒頭の通り、レントンの穏やかな顔。
本当にずっと浸りたいラストシーンでした。
映画作りに関してですが、前作と同様に、ファッション、音楽、映像と、どこを取っても素晴らしかったです。
レントンは前作の坊主から少しモヒカンっぽくなったものの、相変わらずのブリットポップスタイル。
40代になってちょっと小綺麗になっていましたが、きちんと洗ったM-65のフィールドジャケットで颯爽と登場するのはかっこいいです。
サイモンは前作と同じスーツスタイルですね。
スパッドも変わらず個性的。
ベグビーは刑務所で何食べてるんだ?というような太り方でしたが、相変わらずのトラッドスタイルで、アーガイル柄のニットをピチピチで着ていたのが印象的でした。
音楽も幅広い選択でしたが、前回ほどダークな選曲ではなかったです。
ポップな物やヒップホップ的なノリの良いものが多かったように思います。
この辺りはサイモンの趣味が変わったことも影響しているのかもしれないですが、余りヒップホップは詳しくないので良く判らなかったです。
因みに、ラストの「Lust For Life」はprodigyのリミックスらしいです。
少しアップテンポでパンチの効いたかっこいい仕上がりでした。
印象に残ったのはドラッグ後のQUEENの『RADIO GAGA』。
エンディングのひとつ前、ウルフ・アリスの『Silk』も良い展開です。
そう言えばエンドロールの最初にUnderworldの曲が流れて、バックで建物を破壊解体する映像が流れますが、あの意図はなんだったんでしょう?
建物は朽ちて破壊されても、人間の根っこは何十年経っても変わらない。とか?
映像も相変わらずかっこいいです。
おっさん二人が全裸で走る姿ですらかっこいい。
シーンやカット毎にかっこいいと思うのは、構図の選択が素晴らしくいいんでしょうね。
前作の映像や、子供時代の映像もストーリーと上手く絡ませて使いながら、テンポよく繋いだ映像が心地よい物ばかりでした。
最後に、3度目になりますが、ラストシーンが心地よ過ぎる映画!
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
ブログの方では、ネタバレありで個人感想の詳細とネット上での評判等を纏めています。
興味を持って頂けたら、プロフィールから見て頂けると嬉しいです。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※