T2 トレインスポッティングのレビュー・感想・評価
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おめおめと歳を取るということ。
20年経って4人は変わったか。変わったに決まっている。当たり前のことだが、20年は若者をオッサンにするのだ。どれだけバカをやろうが、それぞれには20年という歳月が刻み込まれている。だから前作のような勢い任せの魅力が本作には感じられないのは、しごく当然のことだし、似て非なるテイストの映画になっていることが、この映画が信用できる一番の理由だろう。
本作からとりわけ感じられたのは、容赦なく人間は老いるということ。それはシックボーイが薄毛になったという外観的な意味だけでなく、4人全員が昔のままではいられないと心底わかっていて、それでもココロには“大人になれない自分”が棲みついて離れない。そんな中年の宙ぶらりん感が、可笑しくも切なくて骨身に染みる。懐かしさよりリアルな実感が勝っている点だけでも、20年ぶりに撮られた意義は充分にあった。
かつての勢いを繰り返すのではなく、物語として成熟している
20年ぶりの続編。ボイルやキャストもかつての二番煎じでは成り立たないことをちゃんと理解している。だからこそ、勢いではなくスローに、それぞれの歩調、立ち位置をしっかりと確かめるように物語を起動させていく。ややもするとオーソドックスな語り口にも見えるかもしれないし、観客によっては自分の過去と現在すらシンクロさせ多少の“痛み”を感じる場合もあるだろう。でもこの痛みがいい。素晴らしい。時代と人生に折り合いをつけ、多少絶望しながらも、各々のリミックスとテンポで“Born Slippy”と”Lust for Life”を全うするかのような生き方。そうせざるをえない生き方。その行き着く果て、観客と登場人物の記憶と鼓動が同期するときに、懐かしい風景が眼前に蘇る。こうやって続編でしか成し得ない、唯一無二の語り口を推し進めていくボイル。彼が選びとった方法論に“ストーリーテラー”としての成熟ぶりを感じずにいられなかった。
4人の加齢具合がいい塩梅
トップ俳優として活躍を続けているユアン・マクレガーはまあ当然としても、他の3人もしっかり昔の面影を残しながら、いい感じで年輪を感じさせるルックスになっている。20年も経っていたら、見る影もないほどしょぼくれていたり中年太りになっていたりしてもおかしくないのに。4人のキャラクターが、不在の20年間もしっかりそれぞれの人生を生きていたのだなあと信じさせてくれる。そんな嬉しさがある。
地方の駅のプラットフォーム、トイレの個室、自室のベッドなどなど、前作で印象的だった場所もひとひねり加えて再登場。懐かしさを覚えると同時に、あ、こうアレンジしてきたか、と感心させられた。
ダニー・ボイル監督、前作の「スティーブ・ジョブズ」では円熟の方向に進むのかという気がして少し寂しい気もしたが、「T2」ではまだまだ挑戦する姿勢を示してくれた。
一作目以上に「戻る」が印象的。ただ、戻っただけではない。
○作品全体
一作目は「戻る」演出が印象的だった。麻薬中毒者へ戻る、悪グループに戻る、普通の生活へ戻る。芝居で言えば踵を返す、構成で言えば時間を戻す。ただ、登場人物たちはそれぞれ深刻な状況になりながらも状況を改善できる「若さ」があった。
二作目ではその「若さ」を使い切った状況から始まる。現状に絶望し、楽しかった少年時代に戻ろうとする登場人物たち。その行き場のなさを時にユーモラスに、時に冷徹に描写する。登場人物に肩入れせず、かと行って突き放すことのない作品の距離感が面白かったし、二作目だからこそ、より登場人物の魅力を感じられた。
二作目になって、より「戻る」の表現が鋭利化していた。一作目では今あるコミュニティへと戻っていくことが多かったが、本作では幼少期の頃のコミュニティへと戻っていく。レントンとサイモンの幼少期からの親友、という強調がそれだ。一作目でも二人は親友同士として描かれていたが、本作ではサイモンの家族が経営するクラブで小さい頃の二人が並ぶ映像を使っていたり、二人しかしらない過去の話を持ち出す。ベロニカのセリフに「二人で愛し合えばいい、疎外感を感じる」といったニュアンスのものがあったが、終盤まで二人の関係の深さを表現するものがあり、それが逆に時代の逆行のようにも映る。作品中盤で二人が再び薬物に手を出すシーンも、紛れもない「戻る」描写だった。こうしたものが老いを強調させる「あの頃は良かった」描写と言い切ってしまえばそれまでだが、サイモンの恐喝がバレてしまったり、レントンの環境であったり、現状の行き詰まり感との対比としてうまく機能していたし、「戻る」ことについて悪い意味での居心地の良さを表現していた。
スパッドも薬物中毒者へ戻ることを繰り返していたり、ベグビーも凶暴さを変わらず抱えて街へ戻ってくる。若さを失った彼らが居心地の良いところへ戻ってしまえば、そこにあるのは行き止まりだけだ。しかし、ただ戻っただけではないところがこの作品の面白いところで、戻してしまった自分たちを更地にしてリビルドする希望も描いていた。
スパッドはレントンやベロニカと関わることで自伝を書くという目標とサイモンのクラブの改築作業という日々の生きがいを手に入れた。薬物もやめた。登場人物達の中で一番最初に戻るところからリビルドを始めたのはスパッドだろう。
ベグビーも父から続く暴力と落ちぶれの血筋を息子に求めることをやめて、ケリをつけようとしていた。終盤のクラブのシーンでレントンとともに幼少期の姿を俯瞰で映すシーンは、一度ベグビーの原型を切り取り、過去へ戻した上でリビルドする、といった意味で重要なシーンだ。
レントンとサイモンも手持ちの金をベロニカに取られ、風俗営業の道も断たれ、まっ更な状況に立ち返る。特に、ラストの子供部屋に帰るレントンのシーンがとても良かった。子供部屋からやり直す、という意味付けも面白いし、フラッシュバックして重ねる薬物中毒のときのレントンと今のレントンの演出も良い。昔はそのまま倒れてしまったが、今のレントンは違う。小さな子供部屋だが無限に伸びる可能性も孕んでいる。奇抜な演出ながら実直な表現でもあり、単に希望だけを映すわけでもないところが絶妙だった。
エンドロールでビルの爆破を延々と映す。老朽化したビルを壊したその先には、新たな何かがリビルドされるのだろう。「老朽化」したレントン達と重ねるものとして最高にマッチしたエンドロール。この作品は決して「戻る」ことに執着した没落者を映しただけの作品じゃない。ドラマティックには欠けるかもしれないが、その分説教臭くないハッピーエンドが見られる佳作だ。
○カメラワークとか
・短いカット割りで点描する演出が見ていて気持ちいい。関係のない映像の点描に見えて、レントンやスコットランドの状況を描写する演出が押し付けがましくなくて良かった。
・プロテスタントパブから逃げる車にプロジェクションマッピングで映像を映す演出があった。壁一面に映す、みたいなのもスパッドの部屋のシーンでもあったけど、映像内に映像を映すっていうアイデアの表現の仕方が面白い。いずれも回想のような意味合いがあった。
・過去の自分を見る、という演出が猛烈に良かった。スパッドが一作目冒頭にあった街中を逃げ回るレントン達を回想するシーンが特に良い。昔そこにあった景色を追想する演出。アニメでは割と見る(『あの花』OPとか)し自然なんだけど、実写ではどうだろうと思っていた。本作のシーンはロングショットだからか、全然違和感がなかった。
・割と境界線演出を使うなーという印象。ベロニカがサイモンと話しながらレントンから受け取った金を数えるシーン。窓の外から映した二人の間に窓枠で境界線を作る。風俗を取り仕切るマフィア(?)に森へ連れて行かれるシーン。木の幹でマフィアとレントン達の間に境界線。
○その他
・プロテスタントパブのシーンがすごく面白かった。わかりやすくカトリックを貶せば喜んでくれるプロテスタントパブの人たちとか盛り上がる流れとか。なぜここを襲う?と思いながら見ていたからキャッシュカードの暗証番号がわかるから、ということが分かったところで膝を打った。
同窓会的な映画
前作のあのキャラクターたちが、同じキャストで20年ぶりにでてくるだけでも、ファンとしては嬉しい映画。
ただし全員のダメ人間っぷりは相も変わらずなのだが、そこが悲しくも全く変わっていなくてやはり安心する。
かといって、彼らは普通の底辺の人間なのかと思いきや新規ビジネスを即軌道にのせたり、文才があったりと、本気出せば彼らは堅気の暮らしできるのではないかとも思うので、本当にダメな奴らではないのかもしれない。
唯一立派になったのは弁護士になったダイアンくらいか。
それにしても、ケリー・マクドナルドが相変わらず可愛らしくて安心した。
ちなみに、前作でレントンがくすねた金は一人あたり40~50万円くらいなのだが、その額であそこまで恨み続ける(特にベグビー)あたりがショボくて良い(笑)
人生を選べ
ハードボイルドとは違うんだけど、男の生き様を描く点では同じというか。
あれから20年、街の風景は変わってもクズはクズのままだし、
なんだかんだ言っても変わらない友情ってのも確かにある。
かつて少年だった人にはやっぱり染みるストーリーだったと思うし
あんまり狙いすぎてない感じも好印象だった。
個人的に序盤がけっこう退屈に感じたんだけど、
レントンがサイモンにある告白をしたシーンから引き込まれてしまった。
うん、見てよかった。
同じクソでも老いると切ない
20年経ってもクソ野郎。
同じクソ野郎の物語でも、老いてるだけで切なく感じる。
嗚呼、若さって素晴らしい!
みんな老けたな!
オレもか!
相変わらずだけど…
下層に生きる若者たちの、破滅的だけどどこか愉快な姿を独特な映像と印象的な音楽とともに描いた前作から20年後。
相変わらず皆んな悲惨な状況で、皆んなおっさんになったし(特にシックボーイ)、中年の悲哀もプラスされてる。まあ、中身は対して変わっていないのは少し安心した笑。でも、一度落ちたら、20年でも変われないというのはかなり刺さるなぁ泣。
ダメなやつほど過去にすがるんだよなぁ。
レイジングスパッドのシーンが好き。
結局、皆んなダメダメだし、前作のように裏切られる。
しかし、時が経った(時代が変わった)ことによる心の変化がそれぞれある(ベグビーなんか終始無茶苦茶だったけど、カッコよく感じてしまった)し、救いのある展開があったので良かった。
タイトルなし
前作を全く覚えてない。仲間を裏切り金を持ち逃げしたユアン・マクレガーが20年振りに故郷に帰り、仲間と会う。よくわからない世界観だった
懐かしい面々が…
過去を懐かしむと後悔に自殺したくなるからノスタルジーには浸りたくないし嫌いだ。そんな理由で星は1つ少なくしたがサマータイムのくだりは本当に最高!ブレムナーって何者なの?コメディアンなみに面白い🤣
最高な映画の続編、素晴らしかった。
ノスタルジー
実際と映画の中で同じ年月経過しているっていうのがめちゃくちゃ良い。
みんな元気だからこそできること。
1作目から2作目を見るまで1年も空いてないのにノスタルジーを感じたから、当時からのファンはどんな気持ちなんだろう。
1は期待しすぎたためか期待以下だったが、2はめちゃくちゃ面白かった。やっぱり愛着湧いてるからかな
説明できないけどすごい良い映画。ちょっとほっこり?
期待していただけに…。
前作はめちゃくちゃハマった。
自堕落でシャブ中の若者の世界観、イギーポップやアンダーワールド等の音楽が映像と相まってかっこいい〜と何度も見返し、サウンドトラックも購入した前作。
続編があるのを今更知り、観て観たけど…。
う〜ん…。
シャブ中の幻覚の世界なんかをもっと表現して欲しかったけど、ほとんどなく、期待が高過ぎたのか、あまり楽しめなかった。二作目に過度な期待は禁物だなって思わされた。
彼らが選んだ―20年後の「未来」。
2019年6月30日 T2トレインスポティング 鑑賞
彼らが選んだ-20年後の「未来」。
タイタニックの大ヒットでザ・ビーチの主役がユアン・マクレガーからレオナルド・ディカプリオに差し変わったことが原因でこの続編の製作が遅れてしまったんですが、さすがに20年は長いですよね。
#ユアン・マクレガー#ロバート・カーライル
【20年経っても、人は本質的には変わらない。レントンもスパッドもサイモン”シック”ボーイもベグビーも誰一人変わっていない歓び】
1996年発表の「トレインスポッティング」の主要メンバーをダニー・ボイル監督が集結させた。(脚本、ジョン・ホッジまで)
(今やスターの彼らをよくぞ集めたものである。苦労話をダニーが語っている・・。)
当初、続編のニュースを聞いた際は俄かには信じ難かった。
外見上はそれなりに経年劣化が見られる4人組だが、世間一般の(私の周囲の人間:含む自分)尺度で観ると、余り変わっていないなというのが率直な感想。であるから、物語も”年をとって・・”などというトーンはセリフでは一部出てくるが基本的なスタンスは1作目と同じなのが嬉しい。
一番カッコよいと思ったのは、4人組が木道の上で並んで映っているショット。
皆、良い年の取り方をしている。
しょぼくれて居るわけでもなく、丸くなった訳でもない、20年前と変わらず、今を生きる彼らがそこにいた。
(あと、個人的には、ケリー・マクドナルドの出演が嬉しかったな。)
<2017年4月8日 劇場にて鑑賞>
[蛇足:今作のパンフレットはポップカルチャーの変遷が細かく記載されており、私にとって貴重なものである。家人の”断捨離攻撃”に曝されているが、手放す気はサラサラない。]
がっかりしない続編をありがとう…!
もうそれだけで十分!!と、
1作目が大好きでほぼリアルタイムで観ていた私はとにかくほっとしました。
1作目に比べ映像やストーリーにスピード感はないけれど、20年後なので同じスピード感だと無理やり過ぎ(若作り?)な気もするので悪くなかったと思う。そして実に自然な20年後のシナリオ。
1作目を観ているとファンサービスの様な作品だけど、初めてこの映画から見るとどんな感想になるんだろうと思う。ぜひ未見の方は1作目も観て欲しいところです。
それでもかっこいいオヤジたち
20年たっても冴えない生活
若い頃はそれでも未来を変えられる何かを信じていられたが、、、
20年という月日が変えたものとは
20年という月日を経ての続編
続編ものはあんまり良いイメージがないけれどこの作品は良かった
まず演者達がちゃんと20年という月日を経たんだなあという容貌をしてて、しかもそれがスクリーンのキャラクターとしての20年が刻まれてる感じ。
またストーリーも前作のトーンを映像や編集、音楽で残しつつも現代感もしっかり混ぜてある。ただ前作の時代や風潮を現代より優れたものと捉える懐古主義に陥ってるのではなく、だが昔と変わってるようで変わらない4人の今を周りとの差異や比較、彼らの中自身の葛藤や喧嘩で現しています。
ちゃんと現代がありつつ、彼等の中にもそれぞれの今とは違う時間があって、、、それを直視しようとするけど出来なくてもがく感じとその後
また前作が見たくなります
むなあつ
スパッド!かっこえかった
20年前の映像と重ねる演出多数!
クラブでのトイレシーンをはじめ
過去作を彷彿とさせてくる映像で
昔見た興奮が蘇る。
街を走るシーンも好き。
SNSや非正規雇用とか現代の社会問題を
一方的に話していたのも、
過去をただ憂いてるだけじゃないんやって
そういうマークが見えてよかった。
そして本作紅一点のベロニカ!
見た目も若さもばっちしで。
したたかで可愛かった◎
これ見たら若かりし頃の4人に
会いたくなること間違いなし。
明日借りてこよ。
Danny Boyle
素晴らしい続編。
ダニー・ボイル監督の良さが詰まっているような作品。万人受けするような、美しい映画ではないけれど、男なら、一度は憧れたであろうやんちゃなことを、人間臭くかつ1人の人間として社会で問われるようなストーリーにも触れています。犯罪やドラッグといった、世界では悪として扱われることが当然のものを中心として、4人のキャラクターたちが描かれるのですが、2時間の映画を通して伝わってくるのは、彼らに対する憧れなんかよりも、彼ら4人を繋げる、運命だったり、友情だったり、歴史だったり。そこに感情を持っていけるような長編映画としてのつくりが美しかった。
1作目の1995年の”トレインスポッティング”を観ていない人にとっては、「何じゃこりゃ。」かもしれないが、それもまたダニーボイルらしい。観たい人だけみてくださいって言う感じですね(笑)。1作目ファンにとってはたくさんオマージュもあって、笑えるシーン盛りだくさんでした。スコットランドという馴染みのあまりない文化やアクセントに必死について行くように、前のめりになるのですが、それをかわされるようにコメディ要素が入ってきます。ほんで、映画の中のキャラクターたちが笑わないのがまた面白い。真剣にやっているのにバカしているのがこの作品の一番いいところ。
ダニー・ボイルとアンソニー・ドッド・マントルのコンビのフレーミングは本当に見習うところがたくさんある。まず、レンズの選択。個人的にコメディなどでのワイドレンズが好みなのですが、そのワイドの使い方がすごく好き。ずっとワイドでいくとワイドの良さが消えてしまいます。50mmとか35mmとかで基本を作りながら、24mmとか18mmとかをつかって違和感を作り出すリズムとコントラストが芸術的。さらには、外に出ると150mmとかのロングレンズを使ったりするから、その良さやコントラストがさらにはっきりする。そのレンズの使うリズムっていうのが、キャラクターに比例しているから、さらに映画に入り込める。
シネマトグラファーの役割として、空間をどう操るかというのが一番大事だと思うのだが、今年のアカデミー賞を制した、”ローマ”や”万引き家族”にはそのチョイスが視聴者にオリジナリティーと波長を与えたのではないだろうか。本作もその分野においては素晴らしい仕事をしている!
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