「セルフオマージュにとどまらない本当の続編」T2 トレインスポッティング オレさんの映画レビュー(感想・評価)
セルフオマージュにとどまらない本当の続編
約20年ぶりに再会を果たすスコットランドのどうしよもないジャンキー4人組(1人R.I.P)のどうしよもない話を描いた90年代最高の雰囲気映画の続編。
何が良いのかまったく他人に説明ができないマイオールタイムベストムービー1位のトレインスポッティングの実に21年ぶりかつまさかの続編。
恥ずかしながらベストといいながら映画に関して非常に遅咲きで初めて前作(こんな表現する時がくるとは笑)を観たのは3年前の2014年ごろ。名作コーナーに置かれがちな中身のよくわからないシリーズにハマっていた当時の自分にとって最初この作品はあまり馴染まなかったが数を重ねるごとに絵面が汚い作品
なのにどこか美しさや清々しさを感じるなんとも言えない魅力に夢中になっていた。
ちょうどその当時続編の噂があがっていたが、まさかこんな内容に続編も何もないだろうにとまったく信じていなかったが2015年に正式な発表、2016年に公開され始めた予告編を観て軽く泣いた笑。
とはいえ非常に不安だった。前作から20年余り。オリジナルキャストとはいえ時代が違いすぎる。あのスコットランドの退廃的で気だるい雰囲気を出せるのか、そもそもキャスト陣老け過ぎて青春映画の続編って絵面じゃないぞ、つかレントン八つ裂き血祭りコースだろ笑などあらゆる不安と期待にwktkしながら迎えた公開日。前売りのムビチケカードで前日に予約した地元の映画館の最速上映回に見事寝坊する悲劇を乗り越えながらもお金を払って次の回を鑑賞笑。
まず一言で言えば前作の退廃的な雰囲気は薄い。しかしそれは悪い意味ではないむしろ最高に良い。
冒頭どこかのスポーツジムでランニングに励む老いたマークレントン。
ユアンマクレガーが走ってる!!!!
まずこの時点で素晴らしい!!笑
20年前にベグビーらを裏切り、スコットランドからオランダへ高飛びしていたレントン。
妻(いんの!?笑)との確執、母の訃報も伴って20年ぶりにスコットランドはエディンバラに帰郷したレントンはスパットら昔の仲間に会いに行こうとする。
スパットは未だにドラッグ中毒のまま持ち前のおとぼけが炸裂し仕事は首に、愛する妻からは息子と別居状態で人生に絶望し自殺を図っていた。
あっさりとスパットに嫁がいる発言したがあとあと調べて驚いたのがこの妻が前作で家族と共にう○こを引っ掛けられたかつての恋人ゲイル笑。信じらんねぇ愛の形があっさりと存在していた笑。
前述のようにスパットはおよそ映画史上初であろう人にう○こを引っ掛ける偉業を成し遂げたが、今作では自身の顔にゲロを浴びせる大業を成し遂げる笑。映画史に刻まれていい汚物キャラを20年のブランク無しに見事好演するユエンブレムナーに天晴れ笑。
そして会うのは気まずかったシックボーイことサイモン。バーを営む傍ら、売春やゆすりの副業で金を稼ぎ、仕事のパートナーで彼女(と思い込んでる)のヴェロニカに惚れ込んでいた。
予告編にて既に公開されていたバーでの再会。お互いの20年を埋めるかのようなポツリポツリの会話から一転、溜め込んでいた怒りが爆発し、大ゲンカ笑。かつての分前4000ポンドをレントンから渡されるも何を今更と怒り収まらず、復讐してやると息巻き、レントンにある仕事を持ちかける。
今回大きな特徴としてレントンとサイモンの関係が非常に濃く描かれている。かつての5人組の中でこの2人はガッチリ親友であったが(スパット談)、レントンの裏切りによってサイモンはひどく傷つき、同時に怒り狂っていた。なぜ裏切ったのか、他のやつらはまだしもどうして自分まで裏切ったのか、みたいな感情がすごいうまく出てて良かった。
レントンとともに昔のノリで犯罪に手を染め、その成功をスノウで自撮りして祝ったり笑、かつてのイギリス全土における事件や出来事、社会事情を一回り以上年下のヴェロニカに対して熱く語っては、昔のサッカーチームのユニフォームを着て2人でやたら盛り上がったりといい歳こいたおっさん2人が少年のようにはしゃぐ様には爆笑となぜか涙が笑
情け無さしかないがどこか羨ましい親友同士を熱演。
そして絶対に会いたくなかった最狂の男ベグビー笑。
20年前のあの頃からかわからないが殺人を犯し、以降20年近いブタ箱生活を強いられ、ますます狂気が増したご様子笑。
髪は真っ白、腹はデッポリ、ムスコはしんなりとある意味誰よりも老いを感じさせる見た目だが誰よりも変わってないとも感じさせるギラついたキャラクターは健在。
脱獄後すぐ妻と息子(いんの!?)の元に駆けつけたかと思えば逃亡生活どころか泥棒生活をスタートさせる気狂いぶり笑。
後継者だと決めつけ息子を犯罪に付き合わせてはだいたい自分の力で乗り切るなんとも息子想いな父を演じる笑。
しかし今回のベグビー。とても切ない。
絵に描いたような唯我独尊精神で何の後悔もなく生きていたかのようにかつては見えていたが、ラストのレントンとの対話で自らの不器用さを自覚しつつもそういった生き方しかできない自分の人生を嘆くかのような台詞回しに思わず胸が詰まる。
息子の夢をクソだなんだと否定していたが、自分と自分の父を超える存在になってくれと不器用ながらに応援する本当に父のような一面も見せる。
たとえ人生を棒に振るとしても男としてケリをつけなければならないと最後に4人が一堂に会するラストはどこか悲しく切ない。
各メンバーをやたらと語ってしまったがその上でこの作品が素晴らしい点として音楽はやはり語りたい笑。
前作は90年代後半のUK絶頂期の中、あえて当時の主流であったであろうRADIOHEADやOasisを起用しない70年代80年代の今やレジェンドたちの楽曲を収録したサントラが爆発的にヒットした(らしい笑)
イギーポップをバックに全力疾走するレントンらとChoose Lifeの長セリフ。あれだけで前作は傑作だ。じゃあこの作品はどうだ笑。
続編の決定が発表された際にもやはりサントラが1番気になった。未だにいいミュージシャンはいるけどトレインスポッティングの雰囲気に合うような独特な感覚持った現代のミュージシャンだとどんなのだろうと思い、すごく楽しみにしていた。
そしていざ発表されたサントラリスト。
その中でひときわ輝くLust For Life(The Prodigy Remix)の文字。
プロディジーがイギーポップをRemix?笑
王道のガレージロックをゴリゴリのテクノサウンドに落とし込むなんてタイトルの時点で
少し訝しく思っていたが、出だしの凶悪な重低音にあっという間に頭をヤられた笑。40年前に発表され、20年前に取り上げられ、そして今年新たな形として生まれ変わったパンクの名曲が今回もこの作品に疾走感と爽快感をもたらしてくれている。
さらにはUKの新星Young Farthers、冒頭を荒々しく彩るHigh Contrast、心地よい浮遊感のWolf Aliceとセンス溢れる新人勢に加え、70年代ニューウェーブ代表のBlondie、レジェンドThe ClashやQueenの名曲も入っており、あらゆる世代の音楽を詰め込んだサントラに仕上がっていて個人的には前作越えの名盤だと思っている笑。
ラストには名曲Born Slippyを手がけたUnderworldによる書き下ろしの新曲Slow Slippyも収録されていて、Bornのフレーズをスローテンポに重複していく展開にトランス状態間違いなしの最高の締めとなっている笑。
冒頭でも述べたが今作は前作の雰囲気はない。しかしちゃんとトレインスポッティングだと感じさせる演出になっている。
ある意味別物に感じるかもしれないが間違いなくあのトレインスポッティングの続編なのである。
前作のワンシーンワンシーンをセルフオマージュしたカットや前作の映像を流すなどの演出としてそれはズルいだろみたいなとこはあるが期待以上の内容だったと思う。
とにもかくにもこの時代に、大好きな映画の続編が観れて、それがちゃんと好きな作品になったってだけで嬉しい。
少し寂しかったのが今回レントンの語りが少なかったこととすっかり止めてしまったのかタバコを吸うシーンが少なかったこと。
ユアンの発音がすごく好きだし、あのみみっちい貧乏くさいタバコの吸い方にもどこかクールな振る舞いを感じていたからすごく残念。
あとはダイアンもチョイ役で寂しかったなぁすごい好きなんだけどなケリーマクドナルド。。と思いつつもヴェロニカ役のアンジェラネディヤルコーバ?がとてつもなくエキゾチックな美女だったので素晴らしかった笑。
2017年04月07日(土)1回目@新宿ピカデリー
2017年04月08日(日)2回目@丸の内ピカデリー爆音上映祭
2017年07月23日(日)3回目@早稲田松竹