「過去こそがドラッグ」T2 トレインスポッティング ヒートこけしさんの映画レビュー(感想・評価)
過去こそがドラッグ
20年後の同窓会映画(俺が前作を初めて観たのは5年前)。「過去こそが最も依存性の高いドラッグなのだ」というメッセージは誰しもに痛切に迫ってくるだろう。ラストにあの曲をかけてあの頃のように仰け反るマークに俺は思わず笑みがこぼれた。これも「選んだ未来」!
過去の写真を部屋中に貼るスパッドには泣かされた。麻薬に依存して過去を人生の支えに生きる人間をクズだと笑えるか?マークが言うように「ツイッターやフェイスブックも結局みんな中毒」だ。「あの頃は良かった」と過去に想いを巡らすこともあるだろう。彼らは俺らだ。俺らは折り合いをつけただけで
前作から最も変わったのは作品のタッチ。前作がスタイルと映像表現の映画だったのに対して本作は物語の映画(スパッドが「何に夢中になるか?」という描写からも明らか)。彼らは変わらなかったのにダニー・ボイルだけは変わっていた!
所々斜めに傾いたショットとかマークとベグビーの追いかけっこの撮り方とかは『第三の男』かな?他にも『パッセンジャー』に続き『シャイニング』オマージュがあった。『レイジング・スパッド』はスコセッシ好きには堪らん!
ベグビーは田舎のどん底の沼のような引力を象徴していた。あんな友達嫌やなあ…そんなベグビーにも感動的なシーンがあって素晴らしかった。「親父は酒飲みだ/俺は学が無い/お前は俺たちを超えろ」。ただお前は学が無いというかヤク中ですぐに暴力に走るところがダメなんだろ!だがそれこそがベグビー
シック・ボーイ改めサイモンが007について語らんかったのはなんでだろう?マークの息子の名前にも何の反応も無し。ダニエル・クレイグを認めていないのか?まあショーン・コネリーとはタイプが違うもんなあ…
『T2』は『キッズ・リターン』なんだよ!"Lust For Life"は「俺達もう終わっちゃったのかなあ…」「バカヤロー!まだ始まっちゃいねえよ!」なんだよ!
『トレインスポッティング』と『T2 トレインスポッティング』は精神的な円環構造だと思う。『T2』の最後が『トレインスポッティング』の最初に繋がる。"Lust For Life"で繋がる