「●Greatest Love Of All.」ありがとう、トニ・エルドマン うり坊033さんの映画レビュー(感想・評価)
●Greatest Love Of All.
深いなこりゃ。シニカルだ。ただのコメディじゃない。お涙頂戴を期待しすぎるとスカされる。
悪ふざけしといて、その裏にある恐ろしく壮大なテーマ。
親子間の世代ギャップ。富める国と搾取される国。人間らしさとは。
かと思うと、イネスの誕生日パーティの振っ切れぶりは最高に笑わせてくれる。
本人が出てった後に残された人たちのことを想像すると、また笑える。
さらに。’Greatest Love Of All’の熱唱にはグッときた。改めてその歌詞にも。
親父はいう。「義務に追われてるうちに人生は終わっちまう」。その通りだ。
自分の人生をどう生きるか。そう。人間として。
イネスはきっと金持ちだ。不自由もないだろう。でもなんかロボットみたいだ。
綺麗なベベ着て、パーチーで はしゃいで、クスリでキメて。男がぶっかけた菓子食って。
最先端いってるんだろうけど、精神的な豊かさはそこにはない。余裕というか、遊びがない。
中学生みたいな親父の悪ふざけの方が楽しそうだ。らしさがある。愛がある。
親父の時代とは比べ物にならないくらい、ものすごいスピードで先進国は発展した。
かたや、ルーマニアの厳しい現状。「ユーモアを忘れるな」の解釈が親子で違う。
誕生日パーティに、素直に「正装」で参加する秘書の女の子の覚悟、心くばり。
爆笑から一転、なんか急に泣けたわ。
ゲルマン民族が魅せる壮大な皮肉。脱帽だ。
正直いって鑑賞直後は「?」だったけど、後からくるじわじわ感がこの作品の真骨頂。
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