「好きなシーンと嫌いなシーンがある」レッド・スパロー フジヤマさんの映画レビュー(感想・評価)
好きなシーンと嫌いなシーンがある
劇場で観たのをすっかり忘れて(配信で見たものと思い込んでました)
久しぶりの自宅鑑賞です。
色々と印象的な映画だったのですが、好きなシーンと嫌いなシーンがあるような作品で、
見ごたえはあり、忘れてる細かいシナリオを見たくて再鑑賞しました。
印象をそのまま言ってしまうと、
前半は昭和の男性向けスケベバイオレンス、後半は心理系スパイ作品という感じ。
とにかく主演のローレンスが冒頭から
叔父にいやらしい手つきで触られてたり
性的な女性蔑視の世界感が表現されてます。
その後もレイプシーンやスパイ養成所でのレイプ未遂など
そういうタイプの暴力多めの作品です。
途中で結構痛めの拷問シーンもあるので
そこら辺が苦手な人にはちょっと注意です。(痛いの苦手)
個人的にあまり好きでなかったのがこの女性蔑視表現で
前半まではしつこいくらいに男からの理不尽なスケベと暴力シーンが続きます。
あくまで映画のタイプはメッセージ性の物でなく娯楽作品だと思うので
娯楽としての表現だと思います。
それで上映当時は正直アメリカの作るロシア表現に無頓着だったんですが
改めてみると、この女性蔑視と暴力の世界感を
ロシアに押し付けてるところに、なんだかなあと感じました。
とにかく養成所では娼婦教育をされますが、
途中で少年が好きというターゲットも出てくるのに
男生徒にはやらせずひたすら女生徒にやらせる融通のなさや
傲慢な男生徒がローレンスへのレイプ未遂するのは咎めず
やり返すローレンスは咎めたりととにかく女諜報員にやたら厳しい。
まあ、女性蔑視の国という設定なのかなと理解しつつも
「作ってるのも見るのも(ニーズ)アメリカだよなあ」
というところにモヤモヤがどうしても残りました。
そのうえで好きな部分は
好きな役者さんが多めなことと、後半のスパイ活動が中々見ごたえがあった所です。
スパローになってからのローレンスの淡々とした演技と
ロシア風美女の装いの美しさは眼福です。
同僚の女スパロー、赴任先の嫌な上司、しつこい叔父との間をうまくやりつつ
CIAのナッシュを相手に自分が生き抜くためのシナリオを一人で切るさまは見事でした。
この後半からの彼女の暗躍が最後に伏線回収されるところは小気味いいです。
展開が早く緊張感があるので面白かったです。
序盤で生き残れるか怪しい状況に陥られた彼女が
アメリカにもロシアにもバレずに一番欲しかった母との暮らしを
手に入れて終わったのはたいした成功劇だなと。
彼女の不幸の始まりはバレエ仲間が原因ですが
(サラッと序盤で終わりますが結構な事してますよね)
とはいえ大きくは叔父に騙され引き返せないにとこまで落ちてしまったので
最後にその落とし前もきっちりつけるところが見事でした。
叔父が自分に似ていると言ったとおり
毒には毒というような強さをローレンスが逞しく演じきってました。
ジェレミー・アイアンズが良い役どころで出てるのも嬉しかったです。
それと彼女が初演で踊ったクラッシク曲のエピソードが好きです。
夢の中で曲が色になり、観客たちに色を塗っていったという話は美しかったですね。
ラストでまた流れるのも良い終わりでした。