「一人勝ち」レッド・スパロー U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
一人勝ち
困惑が楽しい!
ロシアのスパイの話しなのだ。
だが、皆さま英語で話しは進む。
ロシアなのに英語?という違和感をずーっと抱えながら観るのだが、ラストまで観て得心がいった。これはアメリカの映画なのだ。
二重スパイさながらに、物語中盤以降「彼女の属性はどちらなんだ?」とドラマの仕掛けを一生懸命紐解こうとするのだが、最後まで分からない。
アメリカとロシアが彼女1人に振り回されてるような感じだ。
最終的に彼女はアメリカに寝返り、かつ復讐を遂げ、ロシアの諜報機関において盤石の後ろ盾を手にし、アメリカの庇護を勝ち取るという、途方もない勝利を収める。
ボディアクションがほぼ無いっていう点も女性スパイっていうポジションに説得力を加えてくれた。
彼女が描いた策略はかなり初期の段階から仕込まれていて…もう驚く程に早いのだが。
誰が内通者であるかはさておき、コイツをスケープゴートにすると決めてかかったかかのようだった。恐ろしいまでの知略!
彼女がCIAと交渉する過程も面白い。
CIAのエージェントにも彼女の正体はバレていて、彼女も彼がエージェントだと知っている。お互いの腹の探り合いも面白いのだが、とにかく内情をバラしまくる。
まずは信頼を勝ち取るためなのだが…双方の裏側を知っている観客的には、綱渡りの真ん中でかち合ってるような危うさがある。
見応えというか、吸引力が半端ない。
結論としてはアメリカ側の大勝利なわけだ。
元々の内通者に加え、新たなスパイをロシアの中枢に送り込む事に成功する。
面白いと思うのは、実はこれ以降の妄想で…物語とは全く関係ないのだが。
「スパロー」という組織は全くのフィクションであったとしても、それに似つかわしい組織がロシアにあったとしたら…?
そして、公にならずとも似たようなケースが両国の間に起こっていたとしたら…?
この物語は事実無根として発表されてはいるが、事実に基づくストーリーだとしたら?
水面下で続く冷戦の一端を垣間見たような気にもなり、全世界的に発信できる映画という媒体に隠されたメッセージ、もしくは忠告を空想してしまう。情報戦略でも、アメリカは一枚も二枚も上手なんですよ、と。
そんな空想を彷彿させてしまう程、良く出来た作品であった。