「真実という名の迷宮へ」三度目の殺人 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
真実という名の迷宮へ
"土曜プレミアム" で鑑賞(録画【2018/10/13分】)。
ノベライズは未読。
ましゃがひたすらカッコいい!
これだけは最初に言っときたかった(笑)。
ファンの叫びはさておき、是枝裕和監督が「ずっと描きたかった」と熱望していた迫真の心理サスペンス劇、開幕!
「裁判で勝てさえすれば真実は二の次」と云うスタンスの重盛弁護士でしたが、被告人・三隅と対峙する中で、彼の独特な雰囲気と底知れぬ何かに絡め捕られていきました。
ころころ変わる三隅の供述、被害者遺族の抱える恐るべき秘密、新たな証言と土壇場での予期せぬ事態。…予想のつかない展開の連続に手に汗握り、物語に引き込まれました。
福山雅治、広瀬すず、役所広司の演技対決が見どころだと思いました。物語が進むにつれて演技達者たちのアンサンブルが白熱し、画面に釘づけになりました。周りを固める脇役たちも適材適所な配役で、観ていて安心感がありました。
判決は下されたものの、結局事件の真相ははっきり明示されず、もやもやしたものが残ったまま終わってしまいました。
正直混乱しました。
判決文に明記されたことも、ただ裁判の中における「真実」であると云うだけで、実際は違うのかもしれないな、と…
犯人は本当に三隅だったのか?
咲江が抱える傷は癒されないままなのか?
そもそも、裁かれるべき人間は誰だったのか?
タイトルの「三度目」も様々な解釈が出来る…
残された疑問は山積みのまま…
真実には絶対的なものなど無く、それを見つめる人々の中にそれぞれの「真実」が生まれる。視点が違えば、解釈も当然違って来る。自分の都合の良いように思い込もうとしたり、そうであって欲しいと云う願望が真実になってしまう…
芥川龍之介の「藪の中」を読んだ時や、同作が原作の黒澤明監督作品「羅生門」を観た際も同じように感じました。
世の中に溢れている真実とは、もしかすると曖昧で漠然としたものばかりなのかもしれないと考えると怖くなりました。
何が正しいとか、何が悪いとか、いろいろな可能性がある中で、自分自身の考えと決断を信じるしかないのかもなぁ…
[余談]
そもそも撮影開始時点で脚本が完成しておらず、撮影中に筋が変わったり、場面の意味合いが変化したりしたそうで、是枝監督の中にも本作の真実は存在していないのでしょう。
[以降の鑑賞記録]
2019/10/26:土曜プレミアム
※修正(2024/06/24)
こちらこそありがとうございます。
真実ってなんなのだろうと深く考えさせられますよね…
ましゃの演技を褒めて頂いてありがとうございます!仰る通り、変化していく様の表現が素晴らしかったです。
いつもありがとうございます。
この映画は本当に考えさせられる作品でした。考えても考えても真実に辿り着けないところがあって印象深い作品でした。
しゅうへいさんの言われる様に何が正しいのか解らなくなります。
判断が難しいです。
ラストの…
役所さんの演技も素晴らしくて福山が接見する度に変わっていく様が見事でした。
時々、共感ありがとうございます。
しゅうへいさんのレビュー、とでも分かりやすく、
黒澤明監督の「羅生門」との類似性(是枝監督は初めから意識の底にあったのかも知れません)のご指摘、思いも付きませんでしたので、
新鮮でした。
新参者ですが、よろしくお願いします。
地蔵菩薩🙏さんへ。
真実がだんだんとぼやけていくというか、あるようで無い曖昧な存在になっていくというのはホント恐ろしいなと思いました。
でも、思い返せば、確かに自分に納得がいくように物事を解釈して、そのままにしておこうとしたことがありました。誰しも経験があることなのかもしれませんねぇ…。
これまで繰り返し読んだ小説を回想してみましたが、「ゴジラ」の原作と「セーラー服と機関銃」、「戦国自衛隊」でした(笑)
syu32🙇
そうですね😅
でも本作なんか原作ありそうな秀逸さなのに、是枝監督のオリジナル脚本でしょ?…故.伊丹十三さんは、監督が脚本書くのがベストドだと言ってました🙏
あと「藪の中」との対比ナイスです。私も「羅生門」レビューに書いた様に…人は話せる生き物だから身を守る為に嘘をつく…と思うし、犯罪心理学では検証済みたいです🙇
私は、映画同様に小説も、面白ければ同じの何回も読んじゃいます😅
手塚治虫先生が、「100人の人に1回しか読まれないより、1人の人に100回読まれるものを書きたい」って言葉が残ってます🙏
地蔵菩薩🙏さんへ。
私も「七つの会議」観ました。「空飛ぶタイヤ」も観ました。両方とも原作未読、ドラマ版未見ですが、仰る通り池井戸作品は映画一本でサラッと終わらせるよりも、連ドラでじっくりとやってくれた方が面白いですよね!
「七つの会議」に関しては、つくり方が映画というよりドラマ寄りだったので、少々物足りなさを感じたということもあり、キャストが豪華で“「日曜劇場」池井戸ドラマ・アベンジャーズ”な面子だったのでめちゃくちゃ勿体無いなと思いました。
電脳雑技集団の社長がましゃ…ナイスなキャスティングじゃないですか!
「三度目の殺人」のコメント欄なのに池井戸物の話になっちゃいましたねぇ…(笑)
syu32氏🙇
私も読みました。池井戸ファンです。「七つの会議」のレビューに書いたのですが、池井戸原作は映画より、絶対ドラマなんですよね…来春のは「ロスジェネの逆襲」+「銀翼のイカロス」確定みたいで楽しみです。
小説も映画化を想定して読む楽しさあります。「パンク侍」も獏サンの「空海」も私的キャスティング外れましたが…ちょっと考えたんですが、ロスジェネに登場する電脳雑技集団の社長をカッコよくアレンジして、福山さんでは?…違うかな?…どちらも2回づつ読んだので、スラスラ出ます(笑)☺
地蔵菩薩🙏さんへ。(コメント続き)
「集団左遷!!」の頑張りましゃ(勝手に命名(笑))もなかなかカッコ良くて私は好きでした(笑) ああいう役がこれまで無かったので新鮮でした。
「半沢直樹」の敵役…演技の新境地が拓けそうですねぇ…。原作はすでに読んだので、該当しそうなキャラクターを妄想しときます(笑)
地蔵菩薩🙏さんへ。
「タビフクヤマ」ですよね? 私も観ました(笑)
あんなに素晴らしい弾き語りされたら運転に集中できへん…(笑) 取り敢えず一旦駐車せざるを得ないなと思いました。
ラストの即興曲「半分の虹」もCD化して欲しいくらいの出来で、感動しました。石田ゆり子の最後のセリフも良かったです(笑)
「ガリレオ」の新作が観たいなと願う今日この頃です(笑)
原作も「沈黙のパレード」という新作が発売されていたり、短編集でもまだドラマになっていないエピソードがいくつかあるので、連ドラseason3からの劇場版で「沈黙のパレード」、というのが現在の希望です(笑)
syu32氏🙇
先週なにげに、Guitar 弾きながらTV見てたら福山さんと石田ゆり子さん、リリーさんと満島くんが出ており(マチネ組と全裸監督組)、やっぱ弾き語りの福山かっこいいってなり、福山さんの「マチネ」知りました。
本作は、劇場で観たかったけど公開間に合わず、DVD で鑑賞。やっぱ福山さんは「ガリレオ」や本作見たいな、知的で聡明な役が似合います。
本物の弁護士みたいでした。今年放送してた間抜け銀行員より、本作みたいなのが見たい!…来春放送の、半沢直樹2に敵役で出てくれないかな?日曜9時だしね😅
僕も、是枝監督へのインタビューを読んで、映画を作りながら「真実」がぼやけていったとは面白いなあ、と思いました。
「事実」に関しては . . . 誰が殺したか、というような事実はどこかに存在します。そうであっても、事実が誰にも分からないことがあります。
ましてや、「真実」などというものは、そもそも存在しない、と考える方が正しいような気がします。「あのときなぜあなたは〇〇したんですか?」と訊かれたら何か答えることはできますが、答えた本人にも本当にそうだったのか分からない。心の中に起こったことは、そもそも完全に言葉にすることができません。それを無理に言葉にする時点で、簡略化・単純化が行われ、さらに勘違いが混ざる。それどころか、言葉にしてみると本当にそうだった気がしてくるという、記憶の書き換えすら起こります。(記憶の書き換えは心理学の分野で十分検証されているようです。)
つまり人の心に関しては「真実」を問うことすら無意味であると言っても良いのではないでしょうか。
そんなことを最初にはっきり気づかせてくれたのが『ハイゼンベルク』という演劇でした。映画にもなりました。