「システムを利用した合法的な殺人」三度目の殺人 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
システムを利用した合法的な殺人
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最近観た中では、『ベイビー・ドライバー』の映画的爽快感と対極をなすようなイライラ感と後味の悪さ。
なのに、〝そうあっては欲しくない〟現代社会の有り様といったものが突きつけられ、ズンとのしかかってくる重い余韻があります。
世の中は結局、出来上がった社会のシステムの都合で動いているのですね。局面的には、誰かの都合であったり、スケジュールの都合であったり、会社や組織の都合であったりするわけですが、世の中全般に於いて、物事を停滞させないためには、どこかで折り合いをつけて都合を合わせなければいけないわけです。社会のシステムの都合や段取りを変えてまで何かをなす為には、アメコミヒーローとまではいかなくても、かなりスーパーな力が無いと難しいのが現実だと思います(少なくとも個人の正義感や理念だけでは、残念ながら、裁判の日程は変えられないということです)。
役所さん演ずる三隅は、自分を殺す、すなわち、三度目の殺人を犯すために、見事に死刑制度という社会システムを〝都合良く〟利用したわけです。この逆転の発想こそがこの映画の肝なのだと、個人的には大いに感心しているところです。
【ご参考】
生まれなければ良かった、いや、あなたを必要としている人がいる、といった切実で真剣で答の出ない心情を色々な角度から描き、それなりに納得感を得られる作品として、新潮文庫 早見和真 『イノセントデイズ』をお勧めします。どこかで三隅の考えの一端と重なるように思います。
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