「三位一体を暗喩する、人間の罪を問う作品」三度目の殺人 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
三位一体を暗喩する、人間の罪を問う作品
第74回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門正式出品。残念ながら金獅子賞(グランプリ)を逃してしまったが、是枝裕和監督のオリジナル脚本による渾身の作品であることは間違いない。
「そして父になる」(2015)以来の再タッグになる福山雅治主演の法廷サスペンスで、対峙する被告役に役所広司。ストーリーの鍵を握る女子高生役に広瀬すずと、キャスティングも申し分ない。
重く強く、"三度目"の意味は何かを考えさせる、深い意味を持った作品だ。観る人によって、殺人の意味や犯人像は変わるかもしれないし、あらゆる可能性がある。しかも犯罪の真実や、動機も最後まで明示しない。ぜひ自身の感性で確認してほしい。
映像はできるだけ彩度を落とし、モノクロームに近いルックで統一している。撮影は「海街diary」(2015)、「そして父になる」でも担当したフォトグラファーの瀧本幹也である。
テーマを暗示する映像テクニックが随所に使われている。"3"はキリスト教の"三位一体"の教義に由来し、3人の登場人物にも意味がある。重盛、三隅、咲江の各々が頬を拭う様子が印象的に繰り返す。他にも"3"が出てくる。
また十字架はキリスト受難を象徴し、人の罪深さのメタファーとなっている。殺人現場の跡、カナリアの墓、3人が雪上に寝転がる姿、エンディングの交差点などが十字架を表している。接見場の窓ごしに重盛と三隅の顔がオーバーラップするのも、同じ罪深き人間としての暗喩である。
映像と同じくらい注目なのは、イタリアの巨匠ルドヴィコ・エイナウディの映画音楽である。是枝監督のラブコールに応えたものだが、音楽と効果音も本作を支えている。
不倫疑惑を持たれる斉藤由貴の人物設定は実にタイムリーで、人生"3度目"の不倫報道は、映画の宣伝のための自虐ネタか? あまりの3尽くしに"世界のナベアツ"を思い出したりして(笑)。
茶化してごめんなさい。いい映画です。
(2017/9/9 /TOHOシネマズ錦糸町/シネスコ)