「君の排泄物と混ざりあいたい」スイス・アーミー・マン kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
君の排泄物と混ざりあいたい
『ジュラシックパーク』を知らないのにローラ・ダーンは知ってるんだな!と、妙なところで洒落た会話に釘づけになった。とにかく友達が欲しかった無人島生活のハンク(ポール・ダノ)。彼の首吊り自殺シーンから始まるこの映画の特異性に思わず引き込まれ、映画のチラシにもなってる死体ジェットスキーがあまりにも早くに登場したものだから、次は何が起こるんだろうとワクワク感でいっぱいになってしまう。
トム・ハンクスが演じた『キャスト・アウェイ』の無人島生活を思い出し、この場面ならこうするとか、サバイバル生活で何が重要なのかを確認しながら見てしまうのです。やっぱり語り合える友達じゃん!と、まずは納得。しかし、相手はメニーと名乗った死体(ダニエル・ラドクリフ)。普通なら死体を背負ってまで歩き回らないぞと考えてしまうが、なぜか死体が喋り出したことから様相は一変。しかも、飲める水を吐き出してくれるし、ペニスは方位磁石の役割を果たすし、弾を込めれば武器にもなる。生前の記憶が全くないメニーに対して、色々教えてあげたり、スマホの画像によってメニーがサラという女性と恋に落ちるという話もする。実はハンクが人妻であるサラに一目惚れしたために盗み撮りしたものであったのだが、メニーのペニスの力を信じて愛するサラという刷り込みを行ったのだ。
方位磁針のおかげでゴミが大量に捨てられている場所にやってきた。これで故郷が近くなったと確信するハンク。それでも大切な友達のために、簡単なバスを作って女装して即興劇などを繰り返すのだ。車のライトを見かけ、人里に近づいたと悟ったなら、もっと真剣に探せばいいものを、くだらない下ネタや家族の話などで友情を築くことが最優先。ついにクマに襲われるという最大のピンチを迎えるのだった。
タイトルは万能であるスイスアーミー・ナイフから付けられたとか。いくら万能死体といえでも、いつかは朽ちていく身体なのだから、最終的には心が通い合うことが大切。終盤の展開を見てもそれはよく理解できるのですが、「君の排泄物と僕の排泄物が・・・」というわけのわからない言葉にグッときてしまった。