「犯人は町(警官、FBI、市民)が逮捕した」パトリオット・デイ 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
犯人は町(警官、FBI、市民)が逮捕した
2013年、アメリカで“愛国者の日”とされる4月15日に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件。
日本でも大きく報じられ、その後すぐ犯人を捕まえた事も記憶している。
改めてそれが僅か102時間のスピード解決だった事も驚きだが、ほんの数年で映画化された事も驚き。
始まりはよくある事件関係者たちの前日当日の日常。
普段この手の作品なら正直ちと退屈する導入部だが、今回ばかりは違う。
事件捜査に当たった主人公警官たちだけではなく、事件被害者たちも。
彼らにはそれぞれ営みがあり、その日もいつも通りの一日になる筈だったのに…。
これから起こる悲劇を思うといたたまれない。
マラソン当日。
ランナーたちが続々ゴールし始めて、我々がニュースで見たあのアングルになって緊張が一気に高まる。
そして事件は起きた。
現場は阿鼻叫喚、大混乱。
手持ちカメラや実際の映像も挿入し、臨場感はたっぷり。
捜査シーンはスピーディー、クライマックスの銃撃戦はスリリング。(それにしても、あんな住宅街で銃撃戦が繰り広げられたとは知らなかった…)
『ローン・サバイバー』『バーニング・オーシャン』など実録事件モノで素晴らしい手腕を発揮するピーター・バーグの演出も快調。
警察とFBIの合同捜査。
ちょっと対立あったのは最初の内だけで、事件や犯人への怒り、逮捕は同意。
監視カメラに映った犯人と思われる怪しげな男二人の特定の早さが凄い。
でもこれは、事件現場…と言うより地元をよく知ってる主人公警官の力ナシでは無理だったろう。
顔写真の公開を巡ってまた一揉め。
慎重さも分かるが、このままでは何も進展しない。
その時の主人公警官の言葉が響いた。
「(顔写真を公開すれば)この町が犯人を見つけてくれる」
犯人を逮捕したいのは警察もFBIも、この町も同じだった。
ついに身元を突き止め、徐々に犯人は追い詰められていく。
犯人たちの動向は序盤から度々挿入。
かと言って、一切共感は出来ない。
多くの死傷者を出した凶行を起こし、事件後また犠牲者を出し、逃走の為にまださらに罪を重ねようとする。
犯人たちをただただ冷淡に描く。
動機は全く描かれず、テロには屈しないアメリカによる愛国者映画という印象も見受けられる。
でも、テロへの恐怖、怒りに国の違いはない。
それに本作はただ単の愛国者映画と対テロ映画だけでもない。
犯人逮捕に尽力した捜査員たちに敬意を。
事件被害者の傷が癒える事を。
犠牲になった方々に哀悼を。