劇場公開日 2017年6月9日

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「テロとは縁の遠い人々だからこそ見るべき映画だと」パトリオット・デイ トトトさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5テロとは縁の遠い人々だからこそ見るべき映画だと

2017年6月22日
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そういえばそんな事件があったなと思い、予告を見ると不思議と興味をそそられて見たこの映画。
普段そこまで熱心にニュースや新聞に目を通さないせいもあって「マラソン大会での爆弾テロ」「圧力鍋に釘や鉄くずを入れて爆弾を作成」くらいの情報しか事件について知らない状態で見に行きました。
というか、正直犯人が逮捕されたのかどうかすらおぼろげだった鑑賞前。

予告でもある通り、2013年のボストンであった爆破テロを1人の警察官の視点から描く作品です。
地元のそこそこの大きさの映画館の中でも、小さめのシアターで上映されていました。同時期に上映されている映画よりは注目度が低いのかもしれません。
ですが、上映が終わる頃には暗い劇場内のあちらこちらからすすり泣く音が。かくいう自分もその1人でしたが。

テロが起きた当時の様子を、ボストンに実在した人々の視点を交えながら描かれる本作。
爆発直後は何が起きたのか分からずパニックになる市民。自分の血だらけの、膝から下が無くなった足を見て叫び出す負傷者。
とにかく負傷者の救護をと、身元の確認もせずにあちこちの病院に搬送されバラバラになる夫婦。
子供を優先して自分の救護は後に回す父親。

当時の凄惨な状況が現実に目に見えるように描かれます。

普段はあまりこういった実話を基にした映画というのは見ませんでしたが、本作は大いに見る意味のあった映画だと感じています。

ラインのニュースや夕方のテレビ番組で、世界各地のテロについて知っても、どこか自分とは違う世界のものに感じてしまっていた自分。
銃なんて持ったことすら無い人の方が多いこの国で、そんな凄惨な状況を、新聞の文字と規制がかかり全貌までは見られないニュース映像だけ見て想像をするのがいかに難しいか。
そんな中でこの映画を見て、それらが自分の中で少しだけ現実にあるものに近づいた気がするのです。

自分の半分にも満たない、短い時間で生涯を終えた少年がいたことを。
どこの誰とも知らない人間にに足を奪われ、恐怖と悲しみに暮れた夫婦が、今でも義足と共に力強く行きていることを。

そんな日常では忘れがちな、平和のありがたさ、テロの恐怖、人の強さを感じられた作品でした。
是非、劇場で鑑賞することを勧めます。

トトト