「多くの若者の命の消失に直結する困難な重い王の決断、それがノルウェーの誇りとなった」ヒトラーに屈しなかった国王 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
多くの若者の命の消失に直結する困難な重い王の決断、それがノルウェーの誇りとなった
エリック・ポッペ監督による2016年製作のノルウェー映画。
ノルウェー映画は多分初めて。ナチス軍による攻撃や首都オスロからの北方向への政府の断続的移動、国王の降伏拒否の決断等、史実に忠実らしく、欧州歴史を理解する上で勉強になった。
後、強国がいきなり攻撃を仕掛けてくる恐怖、逃げても逃げてもどんどん敵が迫って来る恐怖、日本が近年経験したことがない恐怖、それがウクライナのこともあり身につまされた。
そして、ノルウェーの平和を求め講和受け入れを、敬愛するノルウェー王に提案するドイツ公使の努力もきちんと描かれており、好印象。実兄はドイツに即時降伏したデンマーク王、息子の嫁はスエーデン王族という欧州王族の家族像もかなり興味深いものがあった。
そして、何よりも腰を落とした、しっかりとした国王の描写に心打たれた。命を落とすことになるかもしれないが、それでも祖国のためにドイツ公使に合う決断をする。そして、自分の判断が多くの若者の命の消失に直結する困難な重い決断を行い、それを内閣に伝える。映画では詳しく述べていないが、その後、ドイツ軍に全土蹂躙されて国王らも英国に逃れることになる。何という過酷な決断。天皇陛下の無条件降伏受け入れ決断を、思い浮かべてしまった。
重い映画なれど、王の孫達とのふれあい、少年兵の活躍等も見せ、祖国の誇りをエンタテイメントとして仕上げた監督等、製作者達の力量に、感心させられた。
原案はアルフ・R・ヤコブセン、脚本はエリック・ポッペ、ハーラル・ローセンローブ=エーグ ヤン・トリグベ・レイネランド。
撮影はジョン・クリスティアン・ローゼンルンド、編集はアイナル・エゲランド。
音楽はヨハン・セーデルクビスト。
出演は、イェスパー・クリステンセン (ノルウェー国王、007/カジノ・ロワイヤル等)、アンドレス・バースモ・クリスティアンセン(王太子)、カール・マルコヴィックス (ドイツ公使)、カタリーナ・シュットラー -(ドイツ公使夫人)、トゥヴァ・ノヴォトニー(王太子妃、スウェーデン王族)。
ユリアーネ・ケーラー -(ドイツ公使館秘書)、アルトゥル・ハカラフティ (ドイツ語を話せる少年兵)。