「いいですよ、映画館でこの舞台的映画を体感してほしい」海辺のリア モンテーニュさんの映画レビュー(感想・評価)
いいですよ、映画館でこの舞台的映画を体感してほしい
おもしろい。
最初のシーンで仲代さん演じる海辺のリア王が孤高で傲慢、しかしもう既に虚栄や見栄などに形振り構ってられない様子を表す、老人の力強い焦燥感をにじみ出した演技を見事にしていると感じた。
また日本海の荒れた波を背景として立ち、映画のどでかいスクリーンの端から端まで動き回る仲代さんの一人舞台のシーンにはおもしろいな~と感嘆した。
演者たちは少ないが、最初に他四人全員出てくる。しかし関係性はなかなか明かしてくれない。じれったくはなるが少し辛抱が必要。
というのも黒木華との会話がはじまりから少し経ってから始まるのだが、関係性がわからないばかりに疑問符が頭に次々と出てきてしまう。阿部寛たちとも同様。このことが一見この映画をつまらなく思わせるのだと思うけどやはり辛抱してほしい。
僕は若く、そのせいでそのように感じたのかもしれない。映画が終わり観客見たら平均年齢60近かったから、あの人たちはそう感じなかったかも。
あと、できればリア王を既に読んだ状態から観るか、観てからすぐに、感動がさめないうちにリア王を読んでほしい。リア王を通じてこそやはり真の値打ちがこの映画にあると思うから。そうしたらこの映画の中で変転する黒木華の姿にどうしようもなく憐れに思え、涙する映画になり、心深く残る映画になると思う。
また、この映画はリア王を、言ってしまえば途中から描いている。だからこそ、こうも言える。主演は仲代さんなのだが、本当の主人公として描き出しているのはコーディリアである黒木華となっている。そしてこのコーディリアは実に上手く演出されている。なんで黒木華なんだろうと映画中考えたが、憐れで悲しくも優しい温かいあの強さを思えば、そうか、黒木華になるなと思える。
印象に幸せもつけたがリア王にとって、コーディリアの存在だけがこの上ない幸せだろうという意味をとってつけた。