「“壁”」フェンス きりんさんの映画レビュー(感想・評価)
“壁”
最近借りた映画はアメリカ映画の「フェンス」。
元々は舞台用の作品で、主演のデンゼル・ワシントンとビオラ・デイビスがそのまま映画でも主役を演じます。
DVDの映像特典を見ると、舞台も映画もそっくりの狭い裏庭!
気づいたことを何点か、
息子ライオンズを中心に・・・
①下町で老いていく父親トロイを先妻の息子が毎月一度訪ねて来て金の無心をしますねー。
あの息子ライオンズ、“無心をするやっかいな息子”をわざと自ら演じることで あの息子は父親を訪う口実を作っているのだと思います。加えて月1で自分を罵倒させることで老いた父親を発奮させている。あの様子が実に感動的で終始胸を打たれました。
もしかしたら彼はお金には困っていなかったでしょう。借りる必要はなかったのでしょう。でも彼は罵られながら金を無心し、必ず金を返すために実家のドアを開けるのです。
息子ライオンズは叩かれても叩かれてもへこたれることなく父親に会い続ける巨大な人間。だって、がっつり四つに組んで父親の生育歴の独白を聞いて、受けとめてやった事があったじゃないですか。
大きくてものすごく強い存在だと思います。
彼は父親の劣等感を決して越えないように自分をセーブしている。
そして継母や弟たち、そして障害のある叔父や父の親友を問安して励ますのです、温かい眼差しです。そういう役どころですね。
願わくは父トロイはライオンズの演奏を聴きに行って欲しかったなぁ。残念。
狭い裏庭で繰り広げられる家族の愛憎のストーリーでした。
目的もわからないまま父親は他者を拒む隔ての中垣=フェンスを作りはじめ、工事は無様に未完成のまま父は倒れる。
そして屈折した父のフェンスの効力の及ばない空の高殿が一家の上に広がって話は終わる。
フェンスを越えてトロイを訪ねて来てくれる人々があれだけいてくれたのになー。結局トロイはフェンスの外に出られなかったのだね。
で、
②僕にとって今訪ねて行くべき人は誰だろうか。足の向かなかった、しかし心のどこかに引っかかっていて、でもそのまま投げ出してあった肉親・友がいるだろう。
それを僕は考える。
僕の心のフェンスを。
③あの割れガラスの窓は何を象徴していたのかな?
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ビオラ・デイビス、大好きです。「最後の初恋」でダイアン・レインの親友として好演しています。