「いい意味で堅調でソツない、豪華なオールスター映画」オーシャンズ8 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
いい意味で堅調でソツない、豪華なオールスター映画
やはり、"オールスター映画である"ことが本作の最大の魅力である。
いまでこそ、"アベンジャーズ"シリーズをはじめ、観る側も"オールスター映画"に麻痺してしまっているが、当時の「オーシャンズ11」の顔ぶれは、やはり夢の競演だった。
リブート新作にあたり、"犯罪チームが全員女性"という設定を聞くと、「ゴーストバスターズ」の女性版リメイク(2016)が頭をよぎったりして、一抹の不安はある。ヒットすればいいのかもしれないが。
しかもスティーブン・ソダ―バーグが監督ではない。大ヒット作はあるものの、寡作タイプのゲイリー・ロス監督が、原案・脚本も兼任するところが未知数である。
結論からいうと、それらは杞憂に終わる。
単純に女性が"金庫破り"をするわけではなく、舞台を"メットガラ"にしたところが秀逸。ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催される資金集めのお祭りは、選ばれた招待客しか参加できない世界最大級のファッションイベントである。
招待されるのもたいへんだが、招待されてもチケット代は3万ドル(330万円)。それなりの服装で臨まなければならないことを考えると、まさにセレブによるセレブのための"ファッション自慢大会"だ。華やかさとエゴとナルシシズムが渦巻く。そこを荒らすわけだから庶民には小気味いいのかも。
劇中にも有名人がたくさんカメオ出演していて、それが楽しい。もちろん"メットガラ"の主催者である雑誌「ヴォーグ」の編集長アナ・ウインターも一瞬出てくる(セリフ一言あり)。
何よりサンドラ・ブロックとケイト・ブランシェットの演技派2人が中心を固めたことにより、実に安定している。ジョージ・クルーニーに負けず劣らず、大御所らしい存在感である。
そして近年、思うような出演作が見つからず、スランプを自認していたアン・ハサウェイ。異色作の「シンクロナイズドモンスター」(2017)の、コミカルな役柄で吹っ切れたのか、もう怖いものなしという感じ。"ベタなスター女優"を演じきっている。
全員がドレスアップというわけではなく、ハッカー役のリアーナのファッションがヒッピー風というギャップ感も面白い。
作品としては、シリーズ的な展開手法がしっかりと継承されていて、"トリックを見せながら手品を見る感覚"と、"あとからネタばらしされるオチ"はそのまま。新味はないが、いい意味で堅調で、ソツない。
犯罪手法は、3Dプリンター的な最新技術はあるものの、ほとんど驚きはなくオーソドックス。むしろ序盤の"万引き"の仕方のほうが感心させられる。
ソダ―バーグ版オーシャンズの青みがかった特徴的なトーンは素敵だったが、本作ではオマージュ的に多少意識している程度。
個人的にはダコタ・ファニングがちょい出演していたのが嬉しかった(作品序盤で、アン・ハサウェイ演じるダフネがライバル心をむき出しにするペネロペ役)。大きくはクレジットされていないけど。
(2018/8/10/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/字幕:佐藤恵子)