「一片の媚び無し! 独立独歩ヒロインのアグレッシヴ冒険譚」トゥームレイダー ファースト・ミッション 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
一片の媚び無し! 独立独歩ヒロインのアグレッシヴ冒険譚
アンジェリーナ・ジョリー主演で大ヒットした『トゥームレイダー』のリブート作……というより、
基となった大ヒットビデオゲームシリーズの起源を描いたゲーム『トゥームレイダー』(2009)
の映画化作、と書いた方が正確かしら。アンジー主演2作とは雰囲気も人物設定も別物です。
予告編では大ジャンプのシーンを3回も入れたり遺跡の様子もあまり見せていなかったので、
『アクションの密度やアドベンチャー要素は実はけっこう薄めなのでは』と心配していたが……
なんのなんの、ガッツリ全編アドベンチャー!
エクストリームアクションや決死の謎解きも豊富で、より現代的&スピーディなインディ・ジョーンズ
といった風情の作品に仕上がっていました。水準以上、観て損ナシの3.5判定。
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見所は何と言っても、主人公ララ・クラフト役アリシア・ヴィキャンデル。
彼女は演技派の印象が強いし線も細いので、世界的に有名な
攻撃型ヒロインが務まるのかと思っていたが、杞憂だった。
冒頭から素手で殴り合うわロードバイクで爆走するわ、いよいよ絶海の孤島での冒険が始まっても
殴る蹴る走る跳ぶ泳ぐ射つ絞める罵る(?)わ、可愛い顔して超アグレッシヴなバッドアスっぷり!
てか、そんな筋肉バッキバキでしたっけ貴女!?
アンジー版ではロマンス要素も多少あったり、彼女自身もゲームキャラみたいなボン!キュッ!ボン!
(古い)の男性向セクシー体型だった訳だが、今回の主人公は男性陣とのロマンスなどほとんど匂わせず、
逆に「退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ!」と吠えそうな独立独歩のアクションヒロインぶりでクール!
(そんな世紀末聖帝みたいなこと言うヒロインやだ)
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しかし、行方不明の父に対してはナイーヴな表情も垣間見せる彼女。莫大な遺産の相続を避ける理由は
父の死を認めたくないからだし、島での再会と別れでは、ぎこちないながらもお互いを想う姿が泣ける。
一緒に冒険する羽目になる飲んだくれイケメン、ルー・レンもナイスサポート。この映画、
物語の流れを悪くするような面倒なキャラとかがあまり居らずサクサクと進むので見易いのも好み。
まあ、そのぶん展開に余裕が無いというか、ややユーモア不足な感じも受けるけれど。
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アドベンチャー要素も楽しめました。
呪術を操る邪馬台国の女王ヒミコの墓を探し出す謎解き要素はやや薄味だがやっぱワクワクするし
(たぶん僕らの知ってる卑弥呼さんとは別人ですよね……)、
死体とデス・トラップだらけの遺跡を駆け抜ける終盤も『やっぱ秘宝を探す
アドベンチャー映画はこういう展開が無いとね!』とさらにワクワク。
ただ、オカルト好きの自分としては終盤の展開がちょい残念。
ゲーム版・アンジー版じゃ亡霊やら動く石像やら登場してたし、
今回もヒミコと侍女が復活してララVS怨霊兵団!みたいなハムナプトラ的展開を期待してたのにぃ。
仇敵マサイアスが悪役としてインパクト不足なので、そこをヒミコ様に負ってほしかった気持ちもある。
あとは遺跡の造形とか島の風景とかについても、ビジュアル面でもう少し遊んでも良かった気が。
リアル&スピーディなアクションはグッドだが、画ヅラもリアルに寄り気味なので、やや地味。
ビジュアルで記憶に残るシーンがもっと欲しかったな。
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しかし総合的には、新ヒロインを迎えたリブートとして滑り出しは上々。
個人的には、ストーリーや人間味の部分で今回の方がアンジー版よりずっと好み。
次回作あるなら楽しみです。あ、その時はニック・フロストも続投で!
<2018.3.21鑑賞>
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余談:
ちなみに本作の元となったゲーム版のシナリオは、亡霊鎧武者が出たりヒミコの力を
軍事利用しようとした旧日本軍の痕跡が発見されたりとかなりのオカルト寄り。
弥生時代の女王の墓をなにゆえ平安時代以降の鎧武者が守ってるのかは謎である……。