「線の細いアリシアだからできる、ララ・クロフトの前日譚」トゥームレイダー ファースト・ミッション Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
線の細いアリシアだからできる、ララ・クロフトの前日譚
可憐なアリシア・ビカンダーが、バキバキに鍛え上げた二の腕と腹筋で大変身。アンジェリーナ・ジョリーの出世タイトルのリブートに挑む。
本作は、アンジェリーナ・ジョリーの「トゥームレイダー」2部作(2001/2003)のリメイクではなく、原作の同名ゲームソフトの2013年版(PS3/Xbox360/Windows版)をベースにしている。
1996年から続くシリーズの、12作品目にあたる2013年版ゲームは、設定をリセットしたトゥームレイダーとしてのリブート(再起動)作品になっており、同シリーズ全17作品中、最大のヒット(1,100万本)となった。
世界的な知名度を誇る主人公ララ・クロフトの、最初の冒険を描いた前日譚的になっており、いわば、"ララ・クロフト ビギンズ"でもある。
普通の少女ララ・クロフトが、やがて屈強な冒険家に成長していく始まりの物語なので、アクション俳優としては線の細い、華奢なアリシア・ビカンダーのキャスティングは成功しているともいえる。
ゲーム的には"育成ゲーム"の要素があり、"ミリタリー/アーマー系"+"美少女"というテッパン設定は、女子高生に機関銃を持たせたり、戦車に乗せて戦わせたい、妄想男子向き。
「インディ・ジョーンズ」に似ている、似ていないという論点も意味がない。似ていて当たり前である。
そもそもタイトルが、"トゥーム(tomb=お墓)" + "レイダー(raider=侵入者)"であり、冒険する考古学者という設定も、原作ゲーム自体が「インディ・ジョーンズ」に影響されているので当たり前である。あまりに似すぎているから、女性設定にしたくらいだ。
舞台は日本の架空の島で、邪馬台国と卑弥呼伝説から創作されている。ちょっと日本人には違和感のある設定であるが、原作ゲームに忠実なストーリーである。映画的にはクロフト家の出自や、父娘の関係が加えられ、今後の"映画シリーズ化"に備えている。
本作は2013年版ゲームの、世界的ヒットを受けての映画化であり、リメイク映画という安易な紹介は間違い。むしろ3D版や4D版を前提としたシーン構成と演出が巧みに施されている。
そういう意味では、日本での3D上映はないのが残念。これはディズニーの「リメンバー・ミー」と同じで、4Dスクリーンを押さえながら、2D吹替版になってしまう。本来の楽しみを提供できないビジネス優先構造が起こした弊害である。
3D上映はないので、少なくとも4Dで観るべきだ。とくに序盤の自転車による追跡レースシーン、また嵐の海での漂流シーンの船の揺れと水しぶきの絶妙なチューニングに感心する。ストーリー展開はあまりにも定石すぎるので4D効果を加えて楽しんだほうが新味がある。
2013年版ゲームソフトでララ・クロフトの吹替声優だった甲斐田裕子がそのまま担当しているのは、吹替版の大サービス。
(2018/3/23 /ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/吹替翻訳:野口尊子)