劇場公開日 2017年9月1日

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「食わず嫌いのゾンビもの」新感染 ファイナル・エクスプレス うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0食わず嫌いのゾンビもの

2025年5月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

これは難しい部類のジャンルというか、正直ゾンビものは大のつく苦手なので、それを前提にして「なぜ、これほどに評価が高いんだろう?」という好奇心から見てみました。

まず、ゾンビものが苦手な理由ですが、さっきまで普通にしていた人が感染したとたんにゾンビとして振る舞う約束事。これに尽きます。ゾンビ化した人が元に戻らないという確証があるのか。かつて人類が経験したことのない厄介な感染症を、見ただけで判断し、自分が生き残るためとは言え、殺してもいいという判断を下せる人が果たしているでしょうか。ましてや、それが自分の肉親ともなれば、何とか助けてあげたいと思うのが普通じゃないでしょうか?まあ、そんな理由からゾンビものは苦手としているのですが。

例えるなら、大嫌いなキュウリを人類がかつて経験したことのない最高に美味い食材として扱った料理がテーマの映画がもしあったなら、どれだけ内容が素晴らしかろうと、私にとってはそれだけで苦痛を伴うジャンルになるということです。なので、「この映画にはゾンビが暴れるシーンが含まれています」という注釈が欲しいほどです。

それを前提にして見ても、ドラマが素晴らしい。逆に、ゾンビものじゃなくて、普通のパニックものにできなかったのかと、思いましたが、それは野暮というものでしょうか。

それにしても、画期的なのが、先ほども上げた要素を十分に考察したと思える内容だったことです。生存者が生きるためとは言え、感染の疑いがある人物を受け入れようとしないことや、恋人や肉親が感染したと思しき時には、さすがに攻撃できないどころか、受け入れてしまう心の通うやり取りを描き出したことや、守るべき人を思って最後まで尊厳を失わないゾンビの様を描き出したことです。

ゾンビ映画は低予算で製作できるので、様々な亜種が存在しますが、『ウォームボディーズ』では、人間の女性に恋してしまうゾンビまでいました。言わばゾンビ描写の部分だけ取り除いて、このドラマが描きたい本質は何ぞや?というところに行きつけば、こけおどしではない光る映画も存在するのです。

しかし、基本的なこと。時間を使ってでも、最低限、この病気または、ゾンビ感染の特徴と対処法、殺しても仕方のない事態であるということを都度観客に説明する努力は怠ってほしくないです。

「皆まで言わなくとも、ドラキュラはドラキュラ。ゾンビはゾンビだよね?」ということで、何かよくわからないけど、襲われたらまず助からないし、自分もゾンビ化してしまう。頭を撃ち抜けば死ぬ。なんてことは、説明しなくても分かるでしょう?みたいな姿勢は、製作者の怠慢だと思います。

うそつきかもめ
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