「ゾンビ映画史上最高傑作の一つ」新感染 ファイナル・エクスプレス 吹雪まんじゅうさんの映画レビュー(感想・評価)
ゾンビ映画史上最高傑作の一つ
韓国では当時「ゾンビ映画はヒットしない」と思われていたらしく、そのため本作では「ゾンビ」という単語が使われなかったそうです。なるほど。
脚本、演出、役者の演技、音楽、その全てが高水準。「グエムル」のような寄り道をせず、ひたすらゾンビとの死闘を描いたのは好印象。脱線することなく、同じベクトルを保ち、それでいて全く飽きさせない。いや、それどころか観客をスクリーンに釘付けにさせるエンタメ力はもはや異常と言っていいでしょう。
特筆すべきは役者の演技。特にスアン役のキム・スアン。彼女の叫びと歌声が耳から離れません。彼女の存在が主人公の最期をより悲劇的にさせており、それでいて妊婦のソンギョンと共に本作における「希望」や「未来」の象徴として輝いていました。ラスト、ゾンビ映画にありがちな、生還者射殺エンドにならなかったのも素晴らしい。しかもテンプレ回避と同時に伏線まで回収するなんて…天才の所業であります。
そもそも、序盤の群像劇を匂わせる見せ方が上手すぎる。ここでテンポよく簡潔に、それでいて非常に分かりやすくキャラクターを見せていきます。浮浪者風の男の存在も面白いアクセントになっていました。「お、お前じゃないんかーい!」って意外な展開(笑)
クソ野郎が最後までクソなのもポイント高いです。途中で改心して共闘するより、「あのクソ野郎どうやって死ぬんだ?まだ何かするつもりか?」と思わせ続ける方が、観てる側としては緊張感と期待感で楽しめます。ホント、エンタメしてるなぁって感じ。
コロナ禍を経験した今観ると、パンデミック時に見せる人間の本性ってホント、エグいなぁって思います。実際、感染者や疑わしい人をゴミを見るような目で見る人いましたから…。まぁ、私の上司なんですけどね。
ホラー・パニックと秀逸なヒューマンドラマが見事に融合した韓国産名作ゾンビ映画。グロ描写はほぼ無いので、万人にお勧め出来ます✨️