「むしろふしぎなひどさ」フューチャーワールド 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
むしろふしぎなひどさ
監督としてのジェームズフランコがやや不可解なのはディザスターアーチストのようなペーソスをもっている一方でFuture Worldも撮っていることである。
かれの監督業はディザスター以外はさえないが、とりわけFuture Worldは素材も方法も展開も80年代風にかかわらず、レトロ趣味の装丁をもっていない。かんぜんに大まじめにマッドマックス2的世界を模倣していた。
しかしボロをまとい荒涼と廃墟を未来にみたててしまう末端映画を、ハリウッドの成功者が監督するだろうか。おそらく、これはもっと違うところへ持っていく映画だったはずである。もっと違うニュアンスを生みだそうとしていたはずである。
そもそもこの映画は、前年のディザスターで大成功を得たジェームズフランコが監督しているという一点によって見続けることのできる映画になっている。
なんか、ものすごいベタだけど、なんかあるのかな、と思って見続けるのだが、とくになにもない。キャラクターもすじがきも画一で、もしこれが「ジェームズフランコが学生時代に撮った映画をリマスターしたもの」なら、なっとくできるが、長い業界キャリアをもっているひとの新作とは思えない。
──すでにするどい人なら、解るかもしれないが、おそらくFuture Worldはジェームズフランコが、The Roomをやろうとした映画だった。と思われる。
おおまじめにマッドマックス2をやってみて、それが、つくっているひとが意識していなかった「なにか」を生み出すかもしれない。そう考えたのだろう。と思った──わけである。
しかし、とうぜんだが、The Roomみたいなものは、意図して、生まれるものではない。Tommy Wiseauのような妙なひとが、我をつらぬいて、偶然生まれたのであって、だとしてもThe Roomはおもしろい映画に変容したわけではなく、ロッキーホラーショー的な愛されかたをされたのであって、そこにはとうぜん限界がある。
つまりティムバートンがエドウッドを生かしたようにTommy Wiseauもジェームズフランコによって生かされたところはある。カルトに個人的に面白みを見出すのは勝手だが、実直に言って、死霊の盆踊りは死霊の盆踊りにすぎない。のである。
おそらくディザスターアーチストをつくっているうちにひらめいたのだろう。「なんかベタでやってみたら、ちがうものが生まれるんじゃないか」と。それが、他愛ないひらめきだったとしても、かれにはそれをやってみる資本も業界内の権勢もあった。わけである。
想像をこえる駄作ぶりに、なんとなく、そんなことを思った──のである。