「フランス人、こんなバカばっかりじゃないよね」ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
フランス人、こんなバカばっかりじゃないよね
『おバカんす家族』のハチャメチャ感が大好きで、大笑いした感じに近く、共通点もたくさん見受けられます。製作年数は2016年ということなのでこちらの方が後発ですね。企画段階で、何らかの影響を受けた可能性はあると思います。
大きな違いは、登場するキャラクターに共感できるかどうかというところ。フランス製ということもあってか、どうにも行動原理にギャップを感じすぎて笑えない事が多いです。アメリカの笑いと、フランスの笑いの違いを比較してみるにはとてもいい題材になるでしょう。
車に対する考え方にもずいぶん差があるようです。この映画ではオートドライブが故障してしまい、160キロ以下にスピードが落とせなくなることがメインの障害になり、やがて訪れるであろう破滅に向かって突っ走る姿をずっと追いかけ続けることになります。
当然、お話の方向としては
(1)大クラッシュの末に家族の誰も助からない。巻き添えで数十人犠牲になる
(2)奇跡的に事態が解決する鮮やかなエンディング。誰も死なない
(3)家族が崩壊する
(4)尊い犠牲によって、みな助かる。この映画では父親か爺のどちらか
などが考えられます。ネタバレになるといけないので、この先は見ていない人は読まないでほしいのですが、誰も(1)は望まないでしょう。
止まれなくなる車なんて誰も乗りたいと思わないし、万が一故障が起きても絶対に起きてはいけない事故です。そんな車が世に出ているという設定について行けないし、もっとも信じがたいウソのひとつでしょう。
さらには、ヘリで救出する作戦が展開したのちに、なぜかバラバラになった車のエンジンも停止しているという都合のよさ。一度宙づりになった車はエンジンが停止するという裏設定でもあるんでしょうか。そもそも、オートドライブの制御パネルが車体の底に配置されていることなんて、考えられない。障害物や、水たまりにはまって機能停止になるのが関の山です。
そのカラクリが、観客だけに見える「神の視点」で語られますが、この映画の最大の弱点です。説得力を増す特殊効果のはずが、所詮は作り事なのだと冷めてしまいます。
道中には、これでもかとばかりに問題が次々に発生していきますが、その原因のほとんどはトンデモな性格のお爺ちゃん。こいつさえいなければ、家族が危機に陥ることもなかったのに。母親は、今までの経験で何も学ばなかったのでしょうか。「この人といると、家族が崩壊する」と。
さておき、非常にテンポよく、勢いだけで最後まで突っ走ってくれますので、絶対に退屈だけはしないと思います。時間の分だけは楽しめること間違いなし。気に入るかどうかはお好みによるでしょう。個人的には、夫婦の秘密の会話が英語で交わされるという裏設定がツボでした。