小学校の時、近所の田んぼで米作りの実習みたいなのがあったのをおぼろげながらに覚えている。と言っても、自分たち児童がやったのは田植えと稲刈りだけで、田んぼを学校に貸してくれてた農家の方が、その間の多くの手順を代わりにやってくれていたのだなとこの映画を見て気がついた。特に、丈夫で美味しいお米を作るために、田んぼに張る水の量の細やかな調整に大きなノウハウがあるということを初めて知った。たとえ広大な農地に日本のお米と同じDNAの種籾を持ち込んだとしても、この手間をかけずして、美味しいお米を他国で作るのはまず無理だろう。日本のお米の価値を再認識できてよかった。
侍タイムスリッパーがたいへん面白かったので、同じ監督の別の作品が都内のミニシアターでリバイバル上映されていると聞いて見に行った。米農家と兼業しているという安田監督の思いが十分に込められ、米作りと同様にていねいに作られた映画だと感じた。稲作の最初から最後までを(劇中での順番は前後するが)追って撮影するのは長期戦でたいへんだっただろう。そのようにして撮られたその時どきの田んぼの姿は確かに美しかった。ただ、ストーリーが湿っぽすぎて、自分にはちょっと合わなかった。劇伴が大げさで、たとえば、故障したコンバインが運ばれていくシーンはあまりにも音楽が悲しすぎて、逆に笑ってしまった(でも、田んぼにゴミを捨てるやつは極刑に処すべきと思いました)。侍タイムスリッパーはやはり別次元でバランスのとれた面白い映画だったのだな。
上映開始が11:40だったので、昼飯は映画の後で食べるつもりだったのだけど、ちょうど主人公が新米のご飯を炊いて亡き父を思いながら一人で食べるいいシーンのときに、他の観客に迷惑なんじゃないかと思うぐらいの勢いでお腹がグーグー鳴って困った。ご飯を食べてから見た方がいいです。