「お互いに欠落してしまっている性格を受け入れ認め合うには多くの時間が必要なのだろう。」しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス はるさんの映画レビュー(感想・評価)
お互いに欠落してしまっている性格を受け入れ認め合うには多くの時間が必要なのだろう。
どことなく埃っぽい風景。絵にすれば樹々たちの清々しさが観る者の心を存分に癒してくれるだろうに。しかし映画の出だしでは淀んだ川に投げ込まれた子猫のような気分にさせられてしまった。
モード・ルイスという画家を知らなかった。
物語が進んでいくうちにイーサン・ホークはどんな声や目線で彼女の言葉にできぬ哀しみを受け入れるのだろうか・・・そんなことばかり、気になって仕方なかった。演技者としてのセリフや立居振舞に関心を寄せていた。ところが、モードに怒りをぶつけてしまったシーン辺りから、そんな演技への興味はなくなってしまった。そして、僕はいつのまにかこの映画のエンドロールが流れる直前のシーンはどんな形で流されるのだろう?そんな興味でいっぱいになってしまった。
そう、どんな人間にも怒りは訪れる。でも、怒りは自分自身に盛る毒薬に他ならない。
この世のすべては変わり続けている。今、怒りを発せられたとしても笑顔を忘れたわけではないのだ。心身の病も自然の摂理と受け止め受け入れ「それは、仕方のないことなのだ。」と笑いながらうなずく瞬間がいかに大切なのかを思い知らされてしまった。
些細な、退屈きわまる同じことを繰り返す日々。いや、そうじゃないんだよ。窓の外はいつもいっも変化に充ち溢れている訳で、その変化を心耳や心眼で丁寧に感じ取ることが大切なのだ。
生きていくと言うことは汚れていくことなんだから、汚れるのが嫌であれば死ぬしかないのだ。
仕合せを実感する瞬間は誰にでもある。
しっかりと目を見開き心を静めてジッとしていないと感じ取れないよ。