「自分の幸せや彩りのある人生について考える映画」しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス にゃこはちこさんの映画レビュー(感想・評価)
自分の幸せや彩りのある人生について考える映画
サリー・ホーキンスさんの大ファンになってしまって、ずっと彼女のお芝居が観たくなっちゃって、シェイプ・オブ・ウォーターとはしご!
カナダの画家モード・ルイスと夫のエベレットの物語。観るまで存じ上げなかったけれど、人が出会って共に暮らすこと、人生の伴侶とは如何なるものか、ということがどんな物語よりもリアルな気がした。
輝かしいハレの日だけじゃなく、遠回りでも地道に心を通わせてゆく過程、またはすれ違う瞬間、人生の殆どを占める「日常」を丁寧に追っていき、それをゆっくりと眺めている時間はとても贅沢で多幸感に満ちた映画体験だった。まるで彼女によって色づいてゆくあのおうちのように。
生まれ故郷の周辺から一度も離れず生きたモードが窓の外を見て「命の輝きが1つのフレームに」と話す所。
全体的に窓越しのショットが多かったけれど、そのフレームから見える世界が1日として同じ風景でないことを知っていたし、その美しさと尊さを毎日感じ、絵に残しながら生きたんだね。
エベレットは不器用な人だけど、雲を見て笑うモードを見つめ、“I see you as my wife.”と最後に言えた。
彼は彼なりに世界を縁取りまなざし(=フレーム)をモードに向け続けていた。その静かな愛情の豊かさに心が震えたし、ラストであのメモを見つけた瞬間私も涙腺決壊した…
モードの「人って自分と違う人間を嫌うの」という台詞は、奇しくもシェイプ・オブ・ウォーター にも繋がる話だ。その「違い」にひそんでる何かをお互いに見出せた夫婦だったのかな。
心が絵の具のように鮮やかにあたたかく染まる物語。主演のおふたりは言わずもがな素晴らしかった…
【2回目 4/24@Bunkamuraル・シネマ】
観納めかなと思っておかわりして来たけど、もうじんわりあたたかいものが身体にしみてゆく名作…あの時こんなこと言ってたのか、そんな表情を見せていたのかと再発見が。
このお話を見つめている時間はそんな細やかな気付きをゆるやかに、でも確かに積み重ねてゆく時間。
今日は完全にエベレットの視点になってて、モードが笑ったり怒ったり拗ねたり楽しそうに絵を描いたりする、そのくるくると変わる表情や言葉の1つ1つをきっと好きになっていったんだな…と追体験したみたいだった。
「皆はあなたを嫌うけど、私は好き」なんて言われたらなあ…
そもそも、エベレットは「俺の人生に入り込めると思うな」って言ってたのにさ…モードは突然現れて、彼の心をノックし続けいつのまにか人生のパートナーになり、先にいなくなってからエベレットがあの貼り紙ラストで見つけるわけじゃん…ほんと見事すぎて泣く…
さて、2人の関係性について改めて考えてみると、エベレットもモードも思うことを、適切な瞬間にきちんと伝えてる。嘘偽りのない自分の言葉で。
だからお互いの想いが私達にも透けて見える。人として尊いと心から思った。
本当に人生の中ではとてもさりげなくささやかな一瞬なのだろう、でもその美しさが沢山きらめいていた。
今日は私より年上の女性達が沢山で、涙目になりながらいそいそと帰って行ったり、感想を丁寧に書いていたり、いつまでも愛おしそうに看板の写真撮ったり、いろんな人がいてそれがじーんと来た。
私が好きなものに対して、その人なりの「好き」が滲み出る瞬間に立ち会えて嬉しかった。
ノバスコシアの景色が本当に本当に美しくて、特に空の色とそれを反射する海と空気の透明感にため息が出るくらい。
モードが窓から見ていた景色を私もいつかこの目で見るのが夢になった。
カナダはシェイプ・オブ・ウォーター も撮ってるから本当に聖地巡礼するために頑張ろうと思う…!