「期待が大きすぎたか?」怪盗グルーのミニオン大脱走 うそつきかもめさんの映画レビュー(感想・評価)
期待が大きすぎたか?
『ミニオンズ』は、私が期待したものとは違う方向性のストーリーで、ややがっかりしたのを覚えています。
今回、気を取り直して、『怪盗グルー』新作を見に行きましたが、別の意味で、期待以下の作品でした。
『ミニオン危機一髪』で、ルーシーへの恋心と、3姉妹への親心に悩む人間臭さと、ミニオンのドジな暴れっぷりが最高のバランスでブレンドされ、極上のエンタテイメントに仕上がっていましたが、今作は約束事が多すぎて、がんじがらめになってしまったように感じました。
その失敗例のいくつかは
・キャスティング(日本語吹き替え版)
特に、芦田愛菜の成長はシリーズにとって大きな痛手ですし、双子の設定で、鶴瓶さんに二役を振るか、生瀬勝久をキャスティングするかはかなりの重要ポイントだったでしょう。
・公開までの作りこみ期間(日本語吹き替え版)
『SING』で、十分な作りこみ時間をかけて、主に歌唱シーンを素晴らしいものに仕上げ、その期待値は最大に膨らみましたが、やっぱり今作は人気俳優や、テレビタレントを起用した前作までの続投が多かったので、主役級の演出には大きく不満が残る出来でした。特に、中島美嘉さんにはもう少し頑張って欲しかった。
・ミニオンたちの性格に方向性をつけすぎた。
何と言っても、彼らの奔放で天真爛漫な行動がこのシリーズの最大の武器なのに、ストーリーに絡まない部分で、勝手に脱走したり、家出したり、オーディションに乱入したりと、やりたい放題の割には「自由意志」が尊重され過ぎて、いたずら好きでいつも失敗ばかりしている彼らの魅力は半減してしまいました。「強いボスが好き」な設定なら、刑務所で他の囚人たちを手足のように使っているシーンは違和感あり過ぎです。
・マーゴのロマンス。ルーシーの母親修行。アグネスのユニコーン探し。など、サブキャラのフラグが立ちすぎて、大きな一本のストーリーの流れが霞んでしまったこと。
・シリーズを通して、新キャラに「見たことある」感がつきまとっていること。特に、悪役キャラのバルタザールは、80年代を引きずった元人気子役の哀しい過去を持つ悪党のはずが、なぜか『月泥棒』のヴェクターと同じようなキャラクターですし、グルーをクビにする新長官のヴァレリーは、『月泥棒』の孤児院の院長を彷彿とさせるオバさんで、結局同じようなアクトしか生まれていません。
などと、不満を並べてみましたが、今後も継続してこのシリーズが製作されることを願ってやみません。スピンオフでも、短編でも、作り続けて欲しい大好きなシリーズです。かわいくて、おかしくて、歌が得意なミニオンたちがスクリーンで暴れてくれることを。