劇場公開日 2017年7月8日

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「大人の事情で作られた映画??」メアリと魔女の花 ch229さんの映画レビュー(感想・評価)

1.0大人の事情で作られた映画??

2017年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画を作るにあたっては、たいへんなお金がかかるものですし、上映する館数を確保するのもたいへんなことです。

この映画に垣間見られるのは、ジブリの新作アニメ映画と錯覚させるほどに寄せていくことが絶対的な命題だったのだろうということ。

そうすることで興行収入の数字が読める作品になり、スポンサーも納得してお金が降りてくるし、スクリーンの数も確保できるし、夏休みのかき入れ時に上映できるし、テレビで特番を組んでゴリ押しとまで思えるほどのプロモーションも打ってもらえる。

新しいアニメスタジオがこれだけのバックアップを得られていることの背景を考えれば、ポストジブリとしての役割という握りがあったことは想像に難くない。

もしかしたら監督は新しいスタジオの旗揚げにともなって、本当はもっと新しい表現、新鮮な風を吹かすような自分の色を濃く反映した映画を撮りたかったのかもしれないのだが、それではお金も集まらないし夏休みに300館を超えるような上映など叶わなかったのだ。

悪魔に魂を売ったといえば言い過ぎになるが、そうした商業的な事情によって妥協を強いられる側面はどのような映画にでも大なり小なりある。

ジブリスタッフ解散を逆手にとって下克上、このビッグウェーブに乗るしかない!そうして着実な数字を確保すれば次作からは少しずつ本当に作りたい映画を作れるようになるはずだ。これはビジネスだ。夢をかなえるための第一歩なのだ!

というような裏話が透けて見えるような気がした。
(※実際は知りませんので妄想です)

しかし昨年は解散したジブリスタッフも多く関わっていると言われる「君の名は。」が空前の大ヒットを飛ばし、宮﨑駿と縁のある庵野秀明監督が「シンゴジラ」で旋風を巻き起こし、同じジブリ出身の苦労人、片渕須直監督が「この世界の片隅に」で衝撃を与え、語り継がれるであろう画期的な年であったことは記憶に新しい。

これらの名作、ヒット作に共通することは、監督の個性と情熱が徹底的に投影された、魂の権化とも言える渾身の作品であったということだ。徹底的にわがままを通した作品といって差し支えない。

そうだ。本気で、自分の言葉で、熱意を込めて語らなければ人は安々と感動などしてくれないのだ。

あの作品たちと絶賛の嵐が巻き起こるのを、メアリの監督はどのような気持ちで見ていたのだろう?

「これはいい流れ来てる!」と思ったのか、それとも「しまった」と思ったのか?

などということを、ずっと考えてしまう映画でした。

ch229