「大長編ドラをジブリ的に=大変よろしい」メアリと魔女の花 あしたさんの映画レビュー(感想・評価)
大長編ドラをジブリ的に=大変よろしい
ネット上の前評判の悪さにびびりながら、しかし前日にアリエッティを見てあれ?言うほど酷いとは思えないぞ、と半信半疑で観賞。
結果、これは大変良い作品でした。
まず脚本が非常に丁寧。
何かに似ていると思いながら観ていて、一番近いのはF先生が生前に作っていた頃の大長編ドラえもんにかなりニュアンスが近いことに気付く。
何もない生活に何もない主人公が特別なものを見つけそれに導かれて非日常の体験をする。
何やらよくわからないけど面白そうで何か特別な事情がある異世界。
そして一度お家に帰るのも非常に重要。
お家に帰りご飯を食べて、やはり家いいわー!と思っていたらその日常に異世界が侵食してくる。
日常を取り戻すために異世界と戦う。
主人公のキャラクターも非常にリアルと感じた。
突然覚醒するでもなく、自信なさげでありげで正直でもなく嘘つきでもない。
そのリアルなキャラクターと我々観客は同じ目線で異世界に入っていき体験して帰ってくる。
なんだなんだと感じながら物語が進む。
エンドロールでも触れていたのでジブリ的なものである自覚も覚悟もあるのだろうから比較されるのはもう折り込み済みだろう。
なのであえて言えば、こういうリアルな主人公のキャラクターは宮崎駿には造形できないキャラクターだろう。
宮崎駿のキャラクターはいつも最初から突き抜けているのがいいところだから。
そういう突き抜けて最初から持っているキャラクターが好きで期待していくとがっかり感を抱くのかもしれないが、とてもしっかりとリアルな主人公で共感と好感を持った。
映画中でこの体験を乗り越えてしっかり自信を持って成長したと感じた。
アクションは左右前後上下にはつらつと動いていた。
ジブリ的な気持ち悪い動きの敵もたくさん出てくるし、アリエッティ的な細部のこだわりも随所に感じられる。
エンタメマンガ映画として申し分ないのではないでしょうか。
願わくは多くの人に見てもらいたい。
特に子供達に。
共感できます。
しかしひとつだけ。宮崎監督には出せないキャラクターというのはどうなのかと…宮崎監督にも平凡なキャラクターの成長を描く作品はいくつかあります。耳をすませばとかですね。とはいえはじめから覚醒してるキャラクターは大半、ヒロイックな主人公を描くのが宮崎監督のルーツでありヒロイン=ナウシカという絶対的な基準がありますからそう感じてしまっても仕方ないとは思います。
しかし今回のメアリには別の魅力がありましたね。キャスティングが良かったのでしょう。