「ミュウツーには敵わないがよくできている」劇場版ポケットモンスター キミにきめた! まいでんさんの映画レビュー(感想・評価)
ミュウツーには敵わないがよくできている
評価者20代半ば。アニメシリーズは金銀まで視聴。ルビーサファイアはちらほら。映画はたまに視聴。原作はブラックホワイトまでプレイ。
「キミにきめた!」は予告にもある通り、サトシとピカチュウとの出会い、およびホウオウの伝説を中心に描かれた作品で、特に20代半ば〜30代前半の初代ポケモン世代には懐かしさを感じさせる作品であったと感じる。
正直、序盤のサトシとピカチュウの出会いのストーリーは、原作を知っている世代からすると、物足りなさを感じる。原作では1話まるまる使って丁寧に描かれていたストーリーを映画の冒頭に詰め込んだのであるから、物足りないのは当然ではあろう。それを目当てに劇場に足を運んだ人は、序盤がサクサク進みすぎては落胆した人も多いのではないだろうか。
しかし、この映画の見どころは、その後のストーリーである。捨てられたヒトカゲ、バタフリーとの別れ、映画特有のロケット団の振る舞いなど、初代ポケモンのアニメのオマージュを再編成してうまく描いていており、懐かしさを感じさせた。登場ポケモンはほとんど初代151匹ではあるが、一緒に旅をしたソウジ、マコトのルカリオやポッチャマ、およびライバル的なポジションのクロスのガオガエン、そしてマーシャドーなど、初代ポケモンから最新ポケモンまで違和感なく登場していた。特にクロスとのバトルは、最新のポケモンをやっていない人にとっては未知のポケモンとの戦闘であり、このワクワク感は初代を懐かしんで映画館に足を運んだ20代半ば以降の特権であろう。こういった世代で、最近のポケモンを離れてしまった世代にも、現代ポケモンへと復帰させたくなる気持ちを奮い立たせるよい構成であったと感じる。
初代ポケモンアニメを視聴していた世代には懐かしく感じさせる場面が多く、全体としてよかったのであるが、思い出補正もあるのであろうがやはり「ミュウツーの逆襲」を越えることができないといった印象である。「キミにきめた」でもサトシが死亡?するシーンがあり、これは完全にミュウツーのオマージュであると思われる。「ミュウツーの逆襲」においては、サトシはミュウとミュウツーの攻撃に入り込んで石化し、その後ポケモンたちの涙で復活する。今回の「キミにきめた」では、マーシャドーに操られたポケモンの攻撃によってサトシが死亡?し、ピカチュウとの絆?で復活するのであるが、どうもこの部分が理解し難い。ミュウツーはわかりやすかった。さらに、ミュウツーでは「オリジナルとクローン」などの大きな主題をうまく掘り下げていたと感じさせたのであるが、キミにきめたではそこまでの主題性を感じることはできなかった。結局のところ、初代ポケモンに親しんだ世代からすれば、ミュウツーには敵わない、といった印象であった。
とはいえ、懐かしさを感じるという意味では十分に楽しめる作品ではあるし、映像も綺麗で、感動的でワクワクするように作り込まれており、大人から子供まで楽しめる作品であると思う。特に20代半ば以降の、最近のポケモンを離れてしまった世代にオススメしたい作品である。