「別物の世界」夜は短し歩けよ乙女 あずまこさんの映画レビュー(感想・評価)
別物の世界
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私は原作小説から読んで、映画を観ました。
SNS、CM等で、小出しに流される映画のワンカットに乙女と先輩と周りの人々の、あの面白おかしくどこか変でいとおしさを感じる1年間が映像化されたことが本当に嬉しくて観るのがとても楽しみだったのです。
しかし、観た結果「あんまりではないか」という思いが正直拭えません。90分という短い時間の中で纏められた手腕、キャスティングの正確さ、京都の背景の映像の細かさは確かに素晴らしいです。月並みな言葉になりますが「凄い!」と思いました。しかし、それでもこの作品は『夜は短し歩けよ乙女』ではありません。著者の京都愛が伝わってくるような風景描写はほとんど省かれ古本市の神様は美しい少年ではなく四畳半の妖怪が縮んだ存在になり、学園祭の偏屈王の恋愛はチープなものになりました。
「私の好きな登場人物たちはこんな人たちだったのか?」という悲しみでいっぱいです。正直、四畳半の演出を乙女たちの話に、この原作を映像化する際に関しては必要がなかった気がします。
今、私が一番おそれていることは、映画から入った方たちが原作を読んで批評する風潮が来たらどうしようということです。過剰反応は十分承知しております。でも、やっぱり私の愛した『夜は短し歩けよ乙女』は映画の中に見つかりません。似たような話だと感じる、まったく違う世界のお話でした。
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