ザ・ダンサーのレビュー・感想・評価
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彼女は大道芸人だと僕は思う。トウシューズを履いてつま先立ちして回転する方が大変だと思うが。
19世紀後半のフランスのバレエは地に落ちていた。ドガの『踊り子』がそれを語っている。この時期も含めて、バレエと言えば、パリではなく、ロシアの各地であると知っておくべきだ。
従って、こう言ったアバンギャルドと言われる前衛的な踊りしかなかったのかもしれない。彼女はダンサーと言うよりは、実業家と言った方が良いと思う。
真実の彼女は、貴族をパトロンとして、地位を築き上げた実業家だったのだと思う。
本当にそうしたか分からないが、トウシューズを履かずにべた足で踊る映像を見ると、アバンギャルドと言えども、バレエとしては減点であろうと思う。トウシューズが履けないから、棒を持ってヒラヒラ付けて回ったと言う事だと思う。
日本でも落ち目の演歌歌手や一発屋の歌手が似たような演出をしたが、結局は続かなかったと記憶する。
僕の様な素人が見ても、彼女の踊る姿は、努力で勝ち取った才能による成功ではないと感じた。全て、運だと思う。
さて、彼女は投光器による光の演出にこだわった。しかし、どうやら、親の七光りにはかなわなかった様だ。
事実に基づく話だろうが、どこまで本当か分からぬ寓話だと思う。
加点出来る点はパトロンとの関係をあからさまにしている点だ。見る者の解釈を妨げていないって事と、親の七光りに勝てない破滅型の演出家と解釈している点だ。親の七光りの女優はトウシューズを履いて踊っていた(本人かどうかは分からないが)真実はもっとドロドロしていたのだと思うが。
半生
彼女の半生が語られる。
ダンスは確かに、現代でおいても幻想的だと思うし美しい。
華やかさが欠如することなく、哀しさや儚さを表現できそうでもあり、当時じゃなくても画期的なダンスだった事が想像できる。
印象的だったのは、彼女の半生よりも、表現者としての気質のようなものだった。
どんな不幸な事がその身に降りかかろうと、誰に裏切られようと、自身が不治の病に侵されていようと…拍手が全てを救ってくれる。
彼女の存在は、観客によって承認される。
表現者だけが共有できる真理を、この映画に観たような気がした。
栄光とか喝采とか夢とか、そんな前向きなものじゃない。
渇望だ。
自身に対する、生きる価値があるのだという免罪符を得る為の、祈りにも似た渇望であった。
後は…フランスっぽく愛欲も盛り込んであった。
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