「ヴァーホーヴェン監督の先進性の表れなの?」エル ELLE つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴァーホーヴェン監督の先進性の表れなの?
最近は女性の自立とか、そういったものをテーマにした作品が多くなった。
そんな中、ポール・ヴァーホーヴェン監督は昔からジェンダーレスな作品を手掛けてきたように思う。性差のない未来、強い女性、自立した女性など。
ヴァーホーヴェン監督は脚本を書かないので、たまたまそういった内容が含まれる作品を監督してきただけかもしれないし、プロデューサーがヴァーホーヴェンなら求めるものが撮れると踏んで起用しているのかもしれないし、その辺はわからない。
もしかしたらヴァーホーヴェン監督が過剰に強い女性が好みで、その性癖が出てしまっているだけかもしれない。
そういった意味ではヴァーホーヴェン監督の性癖がだだ漏れしている本作。屈しない強い女性を描いた。
レイプ被害にあっていながら平静を装い何事もなかったかのように振る舞う主人公ミシェル。
声を上げることも出来ず泣き寝入り。したように始めこそ見えるが、だだ耐えるだけで苦しみ続けるような、そんな前世紀の遺物みたいな展開にはなっていかない。
いつものように息子と接し、仕事も普段と同じようにこなす。ことあるごとに頭をよぎる事件の恐怖に襲われながらも、頼らず屈せず闘おうとするが、強すぎる意思は「危険な女性」へと変わってしまう。
ミシェルが何を考えているのか分かりにくいので、人によっては男を求めているだけに見えてしまう可能性もあると思う。この辺はヴァーホーヴェン監督が失敗したとみていいんじゃないかな。
ラスト付近のフラッシュバックから考えると、もしかしたら男を求める気持ちと断罪したい気持ちの間で揺れる姿を描きたかった可能性もあるかなと思うけど、それはちょっと高度すぎて理解が追い付かない。
凄い昔からジェンダーレスを描いてきたヴァーホーヴェン監督は、つまり先進的なわけで、本作もまた先進的すぎて自分のような程度では理解できないだけかもなと思ってみたり。
サスペンスとして普通に楽しめたのは確かだけど、主演のイザベル・ユペールに興味がないしヴァーホーヴェン監督に対してもあまり興味がないので、そこまで乗れなかった。