「らしさ」エル ELLE ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
らしさ
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宇多丸さんがラジオコーナーでミッシェルのことを「レイプ被害者らしい立ち振る舞いをしない」と言っていましたが、らしい立ち振る舞いをしないのはミッシェルに限らず、登場する女性達皆に当てはまります。母親らしくない。高齢者らしくない。妻らしくない。親友らしくない。
らしくない彼女達を目の当たりにすると、私達は不快を通り越して、脅威にもうつります。「彼女達大丈夫なのかしら?」と。
ヴァーホーベンの手にかかれば、「頭大丈夫かしら?」というこちらの常識についてを議論することは意味のないことだと悟ります。それは登場人物の中に常識という概念がないように見えるからです。
親友の夫と寝るのも、親友がミッシェルを許すのも個人の自由。パートナーの子供とは明らかに違う赤ちゃんを産んでも気にならない。夫がレイプしていることを知りつつ「ずっと相手にしてくれてありがとう」と言ってしまう敬虔なクリスチャンである女性。
でもなんだか清々しい。いつもは見えない何かを隠しているだけなのかもしれない。ヴァーホーベンは人間が奥底にしまいこんである不道徳への憧れを見透かしているようです。特に女性は男性よりも道徳が重んじらる存在であり、身にまとう「らしさ」がなかったら生きづらい。
女性達を不道徳へと誘うヴァーホーベン。いや、元々道徳なんてないんだからと言うヴァーホーベン。この作品はヴァーホーベンから女性達に対する最高級な賛美なのではないでしょうか。
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