「裁かれないことの苦しみと映画『怒り』で描かれたこと」マンチェスター・バイ・ザ・シー 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
裁かれないことの苦しみと映画『怒り』で描かれたこと
極めて重大な過失であるが、法で裁かれるべき過失(過失致死罪?)ではないので、刑務所に収監されるという刑法上の『罪』には問われない。3人の幼い命を奪い、母である妻の心を破壊するという『重罪』を犯したにも関わらず。
これほどの咎を負いながら、身の置き所すら与えられない〝仕打ち〟は想像に絶するほどの責め苦だと思う。刑務所に拘束されながら日々のルーティンに従っていることの方がどれだけ楽か。法の定めたところに従って『贖罪』の機会を与えられることがどれだけ救いとなるのか。
2016年の邦画『怒り』では、様々な登場人物により、取り返しのつかないことへの悔恨や慟哭が、最高レベルの演技力と演出で描かれていました。あの中で、広瀬すずさん演ずる泉ちゃんの悲惨な事件について、結果的に見て見ぬ振りをしてしまった辰哉君は別件で逮捕され、泉ちゃんに関する証言をすれば罪は軽くなるのにしなかった。彼が刑務所で償おうとした罪は、逮捕された事件ではなく、泉ちゃんの心を見殺しにしてしまった取り返しのつかない自分の行動だった。
裁かれないことの苦しみについて、これほどまでに語ってくれた作品は初めてでした。
コメントする