「引きこもり女性を主人公に置き、一歩前進の現実的な物語に留めたのには物足りなさも、好感も覚えた」世界は今日から君のもの Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
引きこもり女性を主人公に置き、一歩前進の現実的な物語に留めたのには物足りなさも、好感も覚えた
門脇麦さんの、大河ドラマ「麒麟が来る」の駒役が好印象で魅了的であったので、この映画を見た。難しい役で上手に演じているとは思うのだが、ヒロインとしては華に欠ける脚本演出になっていたのは、ファンとしてはかなり残念に思えた。
尾崎将也監督・脚本(NHK連続朝ドラ等TVで多くの脚本手がけるも映画監督としては2作目)による2017年公開の日本映画(配給はアークエンタテインメント)。主演は門脇麦。他、三浦貴大、比留川游、マキタスポーツ、YOU、駒木根隆介、安井順平、岡本拓郎ら。
引きこもり女性を主人公に置き、夢の様な絵画の煌めく才能があったとはいかず、現実的でもある好きなイラスト画下絵で一歩前進というところに留めた脚本には、好感を覚えた。ずっと笑顔一つ見せなかった門脇が、最後神宮外苑のイチョウ並木バックに少しそれを見せるのも嬉しく感じた。
ゲームキャラクターのイラストを門脇に頼む三浦貴大が人好きのする良い味を出していたし、門脇が同居する比留川游も遊びでのマンガチックな女兵士役が似合っていて良かった。
ただ、三浦貴大への淡い恋心?が実らないのは悪くなく母役YOUとの自らの意思による訣別もとても良いのだが、人間関係構築上で何も変化がないのは、TVではなく映画ということなので、かなり物足りなく思ってしまった。
わざわざお金を払って映画館に観客は来るのだから、リアリティが有る夢物語を見たいのでは?引きこもり仲間の岡本喜八拓郎が良い味を出していたので、例えば二人の恋愛関係を示唆するとかはあっても良かったのでは。
まあ、これだけ地味な物語りの映画で良しとした尾崎将也監督は、ある意味勇気が有り、潔いということなのかもしれないが。