「【”結婚は生得権である。”1950年代、異人種結婚を違法としていたバージニア州で恋に落ちた異人種の男女の愛が最高裁を動かした物語。】」ラビング 愛という名前のふたり NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”結婚は生得権である。”1950年代、異人種結婚を違法としていたバージニア州で恋に落ちた異人種の男女の愛が最高裁を動かした物語。】
ー 恥ずかしながら、"ラビング対バージニア州裁判"も、"ACLA(アメリカ自由人権協会)"も、この映画で描かれた事実も知らなかった。
映画とは、もちろん娯楽であるが、色々と学びを得る事が出来るモノでもある事を再認識した作品である。
そして、淡々としたトーンの中、レンガ職人の寡黙な男ラビングを演じたジョエル・エドガートンと、強い意志を持っていた恋人のミルドレッドを演じたルース・ネッガに魅入られた作品である。ー
■1950年代。バージニア州。
レンガ職人のラビングは、恋人のミルドレッドから妊娠したと告げられ、大喜びで結婚を申し込む。だが、バージニア州では異人種間の結婚が法律で禁止されていた。
そこでふたりはワシントンDCで結婚し、地元に新居を構えて暮らし始めるが、ある夜保安官に住居に踏み込まれ、逮捕されてしまう。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・今作品では、まさに歴史的な判決”異人種間結婚を禁じる法律を無効にするラビング対バージニア州裁判”が描かれているが、裁判風景は一切描かれていない。
個人的には、ここを描いて欲しかったのであるが、この作品ではそんなドロドロした画を見せたくはなかったのだろうな、と思い直す。
■逮捕され、懲役一年、執行猶予25年。但しバージニア州を出る事が条件というバージニア州判決に従い、ラビング夫婦は姉のいるワシントンDCで暮らし始める。
そこで、二人は三人の子を作るが、ある日一人の子が車に轢かれてしまう。軽傷であったが、ミルドレッドはケネディ司法長官に手紙を書くのである。
彼女にとっては、劇中でも口にしているように"ワシントンDCと言う都会では、子供を育てられない"という思いだったのだろう。
・驚くのは、即座にACLA所属の弁護士バーナード・コーエンが来て、二人をバージニア州で過ごさせるために策を練る姿である。
・ラスト、故郷のバージニア州で、結婚前にラビングが買ってあった土地に家を作るシーン。ラビングが、静にレンガを積んで行くショットがとても良いのである。
<今作を観ると、その背景にはケネディ司法長官の存在が大きくあることが示唆されている。だが、人種間の和解を唱えていた彼は兄と同じく暗殺されてしまっている。
それでも、私はこの抑制したトーンで作られた作品の意義は、現代アメリカを見ていると、大きいと思うのである。>