「駄作でもあり、傑作でもある」打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? いわやんさんの映画レビュー(感想・評価)
駄作でもあり、傑作でもある
私は原作も齧った組として初日に映画館で見させてもらいました。
私が見る前には既に酷評のレビューが多く掲載されており、先入観が付きまといながらの視聴だったと思いますが、個人的に言えば物足りなかったと思います。
ですので多くの方がおっしゃる通り、酷評されるのも致し方ないかと思います。
ですが、原作者の作り出す作品の性格からしてこのアニメに従来的なアニメーション映画の脚本を求めてはいけないとも思います。
あくまで幼い少年少女の一夏の思い出、青春の一ページを垣間見るかたち、パラレルワールド的空間を飛び交いながら近づいて来る別れの時に向けて少しでも最後の1日を長く一緒に過ごしたいと願う、その一部始終を淡々と描いた作品だと思ってください。
そう思って見ると、よりリアルに近い美しい作画や、シャフト特有の斬新な演出、神秘的な音楽とどこか懐かしく、それでいて新しい主題歌、すべての要素で高いレベルにあることがわかると思います。
しかし逆に、これは作品の評価に必要な重要な要素である視聴者目線ではないということにもなります。すべての人が原作を熟知しているわけでなく、大半の人には自己満足の作品としか映らない可能性があるからです。そのような人には何もかも意味がわからず、ただ映像美だけの駄作という風に感じるでしょう。
作品において「面白さがわからないのは世界観を理解してないからだ」という言葉は通用しません。
もちろん作者本人達がそれでいいのなら構いませんが、これでは完全に人を選ぶ作品となってしまい、結果がついてこないため自分達の首を締めることになると思うのです。
私達視聴者は素人ですが、作品に対しお金という対価を払っています。作者に対するリスペクトはとても大切だと思いますが、作者の視聴者に対するリスペクトは無くていいのでしょうか?
この作品を見て私はこんな根本に立ち返りました。
見る人によっては駄作であり、傑作でしょう。
しかし今後この作品がどのような道を辿ったとしても、作者達には一度このことを考えて欲しいなとは思いました。
純粋にアニメについて考えられる方は、一興として劇場でみられるのは悪くないと思います。今時の方には中々ない新たな感性やジャンルの発掘にもなるかもしれません。
しかし、いわゆる従来型のアニメーション映画を基盤に求める方はオススメしません。そのような方は他の作品を当たられることをオススメします。
この作品を楽しむコツは、「深く考えすぎない」ことです。純粋に素直な目で見ると吉でしょう。