劇場公開日 2017年1月28日

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「うまく不安にさせる」インビテーション 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0うまく不安にさせる

2020年7月11日
PCから投稿

日常で、こいつ変だぞ、こりゃ何かおかしいぞ、って人や事がある。
それでも、なんとなく、多数派同調性バイアスや公衆意識が、それを日常のなかに納めようとする。
だいじょうぶっていう自分もいるし、ヤバいよっていう自分もいる。
大災害なら、それが生死を左右する。らしい。

私は真っ先に死ぬタイプである。

しかし、映画を見ていると、登場人物の愚鈍さに「なんで~しないかなあ」と、半畳を入れたくなるのが人情というもの。

ただし、その仕掛けが稚拙だったり、あざといばあい、映画はくだらない。
わかりきった恐怖に共感できないからだ。
その仕掛けが、巧いなら、それは面白い。

主人公を招待したのは、いわゆるスピリチュアル系の夫婦。なんかおかしい。不安が募る。

来る途中、鹿を轢いた。楽にしてやるため、とどめの一撃を加えた。不安。

招待者および参加者とは、かつて交流があったのだが、長らく不通だった。不安。

過剰にウェルカムな態度。なぜなのか、何を考えているのか。不安。

郊外、締め切った邸宅。夜景に映える怪しげな赤い点灯。不安。

意味不明の余興。赤裸々な告白。見せられる啓発系の録画。招待者は何がしたいのか。不安。

これらの事象が、観る者に、じわりじわり迫る。とにかく、ヤバいのだが、なぜ/なにがヤバいのかわからない。それがとても、巧い。

ホラー(あるいはサスペンスやスリラー)は主人公が窮地におちいる話だが、おちいり過ぎると、見ている方は醒めてくる。
いくら何でもそんなバカじゃないでしょ──の感じや、見透かせる先の展開は、面白さを半減させるものだ。

本作のばあい、主人公の賢さが面白さにつながっている。怪しい仕掛けを察知できる主人公だからこそ、映画がくだらなさにおちいっていない。

トムハーディに激似と言われるLogan Marshall-Greenの髭面は、たしかに賢そうだ。(髭面ゆえに、なおさらトムハーディに似ていた)

プロローグの弦とカメラ。不安をかき立てる心象描写や空気感が究竟の出来映え。
とてもイーオンフラックスの監督とは思えなかった。

Karyn Kusamaはさいきんニコールキッドマンを醜女にしたDestroyer(2018)で脚光をあびた。悪くなかったが、セロンのモンスターのように女優の変貌に依存しているところがあった。個人的にはJennifers Body(2009)のほうが楽しかった。現段階のキャリア中では本作がベスト。およそ次あたりでがっつり頭角する監督だと思う。

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津次郎