「クロエとなかなか拮抗してる。太鳳ちゃん凄い」8年越しの花嫁 奇跡の実話 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
クロエとなかなか拮抗してる。太鳳ちゃん凄い
"恋愛×闘病×実話"という黄金の方程式、プラス"佐藤 健"で泣けないわけがない。
結婚を約束していた20代のカップル。ある日、彼女が原因不明の病に倒れ、昏睡状態に陥る。懸命の看病の末、数年後に意識を取り戻したものの、彼氏の記憶だけが消えている・・・という切ないラブストーリー。もちろんオチは、タイトルが語っている(笑)。
主演の佐藤健もさることながら、本作の見どころは土屋太鳳の迫真の演技と、瀬々監督のリアリティ追求姿勢が挙げられる。倒れる直前の暴れる様子、昏睡状態でのカラダの無意識反射、数年にわたるリハビリによる経過を細かく丁寧に演じ分けている。
闘病モノにおける女優の"しっかりメイク"はリアリティと大きくかけ離れるのが通例だが、太鳳ちゃんは、メイクをしていないだけでなく(すっぴんで勝負できる若さがある)、顔が腫れて大きくむくみ、闘病シーンだけ観ると、"土屋太鳳"と気づかないかもしれない。女優として勝負している。
ここで映画ファン的な楽しみ方として、公開中のクロエ・グレース・モレッツ主演の「彼女が目覚めるその日まで」(2017)と、併せて観るという趣向がオススメ。クロエの渾身の役作りも、目を見張るものがあるが、その病気の臨床が共通しているからだ。
どちらも世界に300例前後しかない"抗NMDA受容体脳炎"であり、抗体が自分の”脳”を"異物"とみなして攻撃してしまうというもの。映画「エクソシスト」のモデルとなった少年の症例も実はこの病気だったといわれ、原因不明の精神病として隔離されたり、呪いの一種として封印されてしまうことも少なくない。
映画を通して知ることができるのは、根治不可能な難病ではなく、その原因にたどり着けなかったということ。健康な脳が攻撃されるので、とんでもない症状であるものの、ようやく治療手段の手がかりが見えはじめている。
そして面白いことにこの2作品は、公開日も同じ。主演女優はクロエ20歳、太鳳22歳、さながら日米女優対決である。クロエのほうが年下にもかかわらず、貫禄があるのはさすがハリウッドの実力俳優だが、さきほどの病状のリアリティでは甲乙つけがたい。
さて、本作の主題歌は、back numberの「瞬き(まばたき)」。エンドロールで、ドラマを大きく盛り上げる。back numberは、ちょうど1年前に福士蒼汰と小松菜奈の「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(2016)の主題歌も手掛けており、このクオリティの楽曲をきっちりと仕上げてくるところが凄い。
清水依与吏のソングライティングあってのことだが、約30年も活躍し続ける小林武史のプロデュース力には頭が下がる。
(2017/12/24 /TOHOシネマズ日本橋/ビスタ)