「まさしく「ムーンライト」」ムーンライト コブさんの映画レビュー(感想・評価)
まさしく「ムーンライト」
まさしく「月明かり」のような映画だった。
登場人物の誰もが太陽のように眩しくもなければ、暗闇のような冷酷さでもなく、まるで月明かりのように少しの柔らかさと冷たさが交じり合ったかのように等身大の人間として描かれる。高まった感情が爆発するような場面こそないが、ドラマチックに盛り上げすぎないその“淡さ”こそが魅力だと感じた。
内容についても、3つの時期を通して物語を観ることで気づく少年期にフアンという存在を置く構成の巧みさ、そしてA24独特の彩度や被写体以外を意図的にぼかして“常にシャロンの物語である”ことを明示する演出など、物語全体の魅力や雰囲気を確かなものにしていた。
人種やジェンダーを扱う作品でありながら、声高なメッセージを押しつけず、むしろシャロンという一人の人間の迷いとして描かれることで、そういった問題からやや距離のある私にとっても逆に自発的に向き合いたくなる余白が生まれる。こういった悩みや不安と向き合ったことがある人なら尚更だろう。
静かに寄り添いながら、観る者の感情をそっと内省へ誘い込む──そんな映画だと思う。
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